政府の「競争政策」が海運業の危機を加速している
<日本の海運業の空洞化を加速するもの>
<日本籍の船が10年で3分の1以下に>
宮本岳志君 船舶法の改正案について質問いたします。
今度の法改正は、海運会社の取締役員に外国人も三分の一まで認めようというものでございます。その改正の背景について、このいただいた資料を読ませていただきますと、「近年、外航海運をめぐる国際競争の激化の中で国際的な集約・グループ化の動きなどが進展しており、我が国外航海運企業においても、外国企業との提携や、外国籍の人材の活用等のニーズが高まっている。」と述べられております。
つまり、国際的な集約がどんどん進み、日本海運も外国の大手海運企業とのアライアンス、つまり提携が求められている。そのためにも外国人役員を配置できるようにしたい、こういう趣旨ですか。
政府委員(宮崎達彦君) 先生今申されましたようなそういう国際競争及び外国海運企業との提携、アライアンス、もしくは外国におきます営業活動の強化といったことは背景にございます。それと直接外国人役員を雇い入れるかどうかということとはもちろん直接結びつくものではございませんが、そういう国際活動の広範化、強化ということで、おのずと日本の海運企業も外国の優秀な方を取締役として迎え入れたいという動きが基本的な背景として高まってきておるという認識でおります。
宮本岳志君 日本の外航海運も集約・グループ化が繰り返し行われてまいりました。一九六四年に運輸省の主導で十二社体制から中核六社に集約を図りました。それが八九年六月、ジャパンラインと山下新日本汽船が合併しナビックスラインとなった。九八年十月には昭和海運を日本郵船が吸収合併して日本郵船となりました。さらに九九年四月、商船三井とナビックスラインが合併し商船三井となりました。このように次々と合併し、今や日本の大手海運は日本郵船、それから商船三井、川崎汽船の大きく三社体制となっております。
外航海運は集約に次ぐ集約、リストラに次ぐリストラという形で進んできたわけですけれども、だから他の業界から、最も合理化の進んだ業界と、こういう声も聞こえてまいります。
そこでお聞きしたいんですけれども、日本商船隊と日本籍船は九七年と八七年についてどうなっているか、隻数とその差についてお答えいただきたい。同時に、あわせて外航日本人船員の九七年と八七年の推移について、差について御答弁いただきたいと思います。
政府委員(宮崎達彦君) まず、日本商船隊の隻数につきまして私の方から御説明いたします。
十年前、一九八七年におきましては二千八十二隻商船隊がございましたが、十年後の一九九七年は二千二十一隻でございます。六十一隻の減少でございます。そのうち、日本籍船の隻数につきましては、一九八七年で八百十六隻、十年後の一九九七年では百八十二隻、六百三十四隻の減少という状態でございます。
政府委員(谷野龍一郎君) 日本人の外航船員数について私の方からお答えさせていただきます。
これは船員統計で船員需給総合調査結果報告書というものからとった数字でございますが、八七年十月一日現在では一万七千六百九十五人でございましたが、それが九七年十月一日現在では七千百九十二人となっております。
宮本岳志君 すさまじい合理化、すさまじい減少だと。日本籍船や日本人船員は大激減しているというふうに思うんです。日本籍船は六百三十四隻減少、船員もこの十年間で一万人、六〇%減少ということでございます。結局、便宜置籍船化という形で人件費の安い外国人船員を乗せているという構図、この構図も単純でなくなってきていると思うんです。空洞化の道を徹底して進んでいる。
例えば、商船三井では便宜置籍国に船舶保有会社を置いております。何と各国に八十一も保有会社を置いている。そればかりか、かつては日本の本社で船舶管理をしていたものを、人件費削減だということで香港やシンガポールにその管理会社を設置して、そして貨物集荷など営業拠点となる海外支店も現地法人にして、役員も現地人を採用する。こうして本社機能を現地法人に移管するなどしてきているわけであります。こうしたことによって、商船三井は社員一万人のうち八千人が外国人と言われております。
日本人船員や働く人たちが海運企業からいなくなる、まさに空洞化という事態だと思うんですけれども、これが皆さんのおっしゃる国際化、グローバル化ということなんでしょうか。
政府委員(宮崎達彦君) 国際競争にそれなりに日本海運企業が耐えながら頑張っていくということは、貿易立国でございます日本としてはこの国際化の中ではやむを得ないことかなと思っております。一方で、日本籍船の船舶を持つことによるいわゆる産業の育成及び船員のノウハウの伝承といったことが国策としてどの程度求められるかというバランスの問題であろうかと思っておりまして、ゼロになることが国際化であるというふうには決して思っておりません。
<日本人船員の雇用を確保する方策を>
宮本岳志君 こういう実態も本当に受けとめていただいて、ひとつ運輸大臣にお伺いしたいんです。
大手三社は、外国大手海運との提携、アライアンスという形で、世界の基幹航路というものは今五グループと一社による寡占状態が形成されているというふうに言われております。この五グループにかかわって言いますと、例えば先ほど申し上げた商船三井はNOL、APLなどとニューワールドというアライアンスを組んでおりますし、日本郵船は英国のP&Oネドロイドという会社とグランドアライアンスというグループをつくっております。また、川崎汽船は中国のCOSCOや台湾の陽明海運と協調配船をする。こういう状況で、この五つのグループに集約をされていっているわけです。
海運市場をめぐって熾烈な競争が続いて寡占や独占化が進むことは、海運秩序を乱し、大変危惧される問題をはらんでいると思います。こうした動きの中で、国際的な集約、吸収合併が促進されていくなら、日本の船舶はなくなってしまうのではないかとの声すら出されてまいります。同時に、日本人船員を含めて海運企業の雇用も重大事態であると言わざるを得ません。
これは日本の海運行政のまさに根幹にかかわる問題なので、運輸大臣にひとつ、この二点についてどうお考えかということをお伺いしたいと思います。
国務大臣(川崎二郎君) 海運のみならず、先ほど申し上げたように、製造業も含めて国際競争の厳しい中にあります。破れれば当然倒産せざるを得ない、もしくは外国に買われざるを得ない、こうした状況下で民間が知恵を絞りながら努力していることは一つの事実だろうと思います。
一方で、先ほどから申し上げていますとおり、我が国の海運としてこれ以上籍船を減らしたりまた雇用を減らすということについては何とか歯どめをかけることはできないかということで、平成八年に新しい制度を導入させていただいた。申し上げたように、三年たつことになりました。さあ、これで十分の効果があったのか、いや、これに増して何かの対策を打たなきゃならないのか、まさに今洗い直しの時点が来ておるんだろうと思っております。
そういった中で、我が国が極端な保護主義という政策をとり得ない、これはもうおわかりのとおりであります。したがって、極端な保護主義でない中で、何とか民間の皆さん方ともお話し合いをしながら、日本の雇用、また籍船というものを確保できるような方策を努力をしてまいりたいと思っております。
宮本岳志君 この問題にかかわって、カボタージュということについてお伺いしたい。
国内での港間の運送に当たってはその国の船籍に任せるというのが国際原則だと聞いております。アメリカやノルウェーなどは条約においてカボタージュ規制というものを認めておりますけれども、日本でも条約がなくてもこれは当然のことだというふうに思っております。これはよろしいですか。
政府委員(宮崎達彦君) 今先生がおっしゃいました外国船舶による国内輸送、いわゆるカボタージュでございますけれども、これは国家の安全保障でありますとか地域住民の生活物資の安定輸送の確保とか、そういった観点から、それに従事いたします権利は専ら自国船舶に留保されるといったことが国際慣行上確立しております。
我が国におきましても、船舶法第三条におきまして、外国船舶によるカボタージュを原則として禁止しておりまして、例外的に認めるに当たっても運輸大臣の許可を必要ということにしております。
今回、船舶法を改正いたしますけれども、この三条につきましての改正というのは一切直接関係するものではございません。あくまでも日本船舶の所有者要件についての緩和を行うものございまして、カボタージュ規制につきまして緩和をするものではないということを御理解いただきたいと思います。
宮本岳志君 くどくなるようですけれども、この最後に運輸大臣にも御確認させていただきたいんですが、外航海運の国際船舶に限って船舶職員も外国人が乗船できるように法改正がなされました。昨年の四月二十一日当委員会で、我が党の筆坂議員の質問に対しての国会答弁での約束、このときこう述べておられます。内航海運に外国人が就労するということは今後とも禁止する、こういうお約束でございます。
改めて再確認ですけれども、今度の改正で取締役に外国人が就任すると、この機会に内航海運にまで外国人船員が乗船できるようにするなどということはあり得ないと思うんですが、よろしいですね。
国務大臣(川崎二郎君) 内航船への外国人船員の受け入れについては、単純労働者は原則として受け入れないとする政府全体の施策に準じ認めないとする施策をとっております。
内航船への外国人船員の導入については、今後とも、内航日本人船員の雇用に対する影響、船内コミュニケーション等安全の確保上の問題、さらに他の労働分野への波及などを考慮すれば困難であると考えております。
<改善が必要な新しい海難警報システム>
宮本岳志君 次に、少し問題を変えて、GMDSSと新生丸の海難事故について一つ二つお伺いしておきたい。
一月二十日のマグロはえ縄漁船新生丸事故は、二月一日からのGMDSSによる遭難安全通信システムへの移行を控えて大問題になりました。救助がおくれた原因として、GMDSS対応のEPIRB、非常用位置無線機が七分間しか発信されなかった、あるいは船体から外れなかった、遭難警報の九〇%以上が誤発射という実態など、このシステムの信頼性について大きな議論となってまいりました。
我が党は、GMDSSの導入については、科学技術の進歩を人命救助や安全対策に生かすことは当然との立場から賛成をしてまいりましたが、同時に誤発射の問題についても、九六年二月、本委員会で上田耕一郎議員も取り上げるなど、以前からこれを指摘し対策を求めてまいりました。しかし、何の対策もとってこなかった運輸省の責任は重大だと思います。
新生丸の事故を受けて、GMDSS体制の欠陥、誤警報問題をどう改善するのか御答弁ください。
政府委員(谷野龍一郎君) お答えを申し上げます。
遭難警報の誤発射問題につきましては、これまでIMOの場におきまして、もちろん日本も積極的に参画をしておりまして提案をしておりますが、数多くの議論が重ねられてまいりまして、DSCの警報発射のダブルアクション化など多くの改善策が講じられてきております。その結果、絶対的な数字としてはまだまだ減少のための努力をする必要はありますが、船舶への設置数の急激な増加に対比しますと、比率では一定の誤警報を減少させるための効果が上がっているものと考えております。
しかし、先生御指摘のとおり、さらなる信頼性を高める必要がございます。漁船新生丸事故を契機に今般設置されました捜索救助連絡会におきまして、誤発射の詳細な実態調査を行うとともに、関係者に誤発射防止対策について十分御議論をいただいて、具体的な対策の内容を検討していきたいと考えております。
特に、誤発射の内容として操作上のミスが多いという点を踏まえますと、GMDSS設備の使用方法の周知徹底等システムへの習熟の促進とか、あるいは中継方法の改善を図るなどソフト面における対策を強化して信頼性を向上させる必要があると認識をいたしております。
宮本岳志君 最後に、運輸大臣にお伺いいたします。
GMDSS体制への完全移行により、遠洋に出ていく船舶に乗船する通信士は、第一級総合無線通信士、一級海技士の資格から、第三級海上無線通信士が乗船すればいいことになりました。簡単な講習で資格が取れる第三級海上無線通信士で船上保守が実施できるのか心配があるとの指摘もされております。また、今までは第一級総合無線通信士の資格を取るのに大変な労力、知識、技術を要したわけです。その資格もGMDSSの導入で効力を失いかけている。
今までの通信士の資格に見合う雇用の確保に万全の体制をとること、技術的、システム的にも誤作動などで確立していない段階では、例えば当分の間は船上保守を必須条件にするなど、何らかの手だてをとる必要があるのではないか。この点、大臣の御所見をお伺いして、質問を終わります。
国務大臣(川崎二郎君) GMDSS通信設備を施設する船舶につきましては、今御指摘のとおり、通信長と船長等の職務を兼務することができることになり、ある意味では通信士を単独で乗り組ませる必要はなくなった。しかし、これまで通信士が果たした役割、その専門的知識等にかんがみるならば、今後も十分その能力を活用されて、海上、陸上を問わずその雇用の確保は図られるものと考えております。
宮本岳志君 終わります。
<日本の海運業の空洞化を加速するもの>
(討論)
宮本岳志君 私は、日本共産党を代表して、船舶法の一部改正案に反対の討論を行います。
今度の法改正の背景、目的は、法案説明にあるように、国際的な集約・グループ化の進展の中で日本外航海運企業も外国大企業との提携を強めていくことを目指したものであります。
このことは、第一に、日本海運の空洞化を促進させ、日本籍船の減少と日本人船員や海運労働者の雇用を奪うことに拍車をかけるものであります。日本の外航海運は、他の業界から最も合理化の進んだ業界と言われるほど大合理化が進んでいます。
既に、日本籍船の日本商船隊全体に占める比率は、十年前には三〇%を占めていたものが今やわずか八・五%にすぎません。日本人船員も十年前の約一万八千人から約七千人と一万人も激減しているのです。しかも、日本の大手海運は、営業拠点や本社機能を現地法人に移管し現地人を採用する等、日本海運の空洞化政策により危機的状況にあると言えます。
第二に、日本の外航海運の集約・グループ化が繰り返し行われてきました。十二社体制から中核六社に集約され、現在はわずか三社となっています。その上、国際的な集約、吸収合併が促進されていくのなら、海運市場での寡占・独占化が一層進むことになり、海運秩序を乱すことは明白であります。加えて、日本籍船の存在すらなくなってしまうおそれが生じるのであります。
最後に、今度の改正で取締役に外国人が就任し、これを機に内航海運にまで外国人船員が乗船可能にすることは絶対あってはならないことを指摘し、討論を終わります。