3月23日 交通・情報通信委員会(99年度NHK予算)

    全てのテレビ番組への字幕付与は聴覚障害者の願い 

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<NHK受信料は値上げしないと答弁>
<懸念される番組の制作コストの高騰>
<年次計画に基づく努力をNHKが約束>
<字幕付与の義務化が必要な民放の現状>

 

 

<NHK受信料は値上げしないと答弁>

宮本岳志君 日本共産党の宮本岳志でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 御承知のように、一九九六年の行政改革委員会の規制緩和小委員会、ここではBS放送の有料スクランブル放送化ということが求められました。また、先ほど来議論になっておりますように、九八年三月三十一日の閣議決定では、規制緩和推進三カ年計画としてNHKのBS放送のスクランブル化について、「実施について検討する。」としております。
 これらの主張を見てみますと、NHKが受信料で放送しているということは市場機能を阻害するとして、NHKに市場原理に基づく民間放送との競争を求める、現行の受信料制度をやめて有料放送化を迫るという内容を持っております。これは現行の受信料制度の精神を根本から変質させるものではないかというふうに私は思います。
 スクランブルをかけますと、BS放送を見る視聴者は料金を払って初めてスクランブルを解除して見るということになりますので、つまり見たければ金を払えということに、発想はそういうことになってまいります。つまり、放送サービスの対価としての受信料という発想になってくるというふうに私は思うんです。
 しかし、現行の受信料の精神は決してそういうものではないと思います。放送法第三十二条、「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。」、つまり、NHKが公共放送として国家権力や企業などから独立して運営する財源をきちっと広く国民から集めること、徴収することを認めているわけであります。また、調査室がつくってくださったこの資料を見ましても、「「受信料」という名の特殊な負担金」だというふうに説明されておりまして、「サービスや商品の対価としての料金でない」、こうはっきり説明されております。
 NHKは、このスクランブル化について二〇〇〇年時点では実施する考えはないというふうにおっしゃっております。しかし、同時に、BS放送がすべてデジタル化された段階ではスクランブル化の問題を含め改めて検討するとしておられますが、まず海老沢会長に、この問題はNHKの公共放送のあり方にもかかわる大問題だという御認識があられるかということをお伺いいたしたい。
参考人(海老沢勝二君) デジタル放送についてNHKが有料スクランブル化するかどうか、これはたびたび御答弁申し上げていますように、私は有料スクランブル化は今する考えは持っておりません。やはりこれはNHKの受信料制度の根幹にかかわる問題でありますし、私は、NHKの受信料制度、つまり全国民から等しく公平に負担をしてもらう、そういう制度は世界にも例のない非常にすぐれた組織だろう、そういうふうに確信いたしております。そういう意味からも、できるだけこの受信料制度を維持したいというのが私の心からの希望でございます。
宮本岳志君 私、昨年一月にNHKが発表された「デジタル時代へのNHKビジョン」、これの中身を子細に読ませていただきました。この中で、「平成十―十二年度の受信料額については、経済状況やNHKを取り巻く環境に著しい変化がない限り据え置く」としておられます。この四年間の決算は黒字で推移をしておりますし、今年度の予算案では九十四億円の黒字を見込んでいるのですけれども、この要因は経費削減など経営努力もあるでしょう。また、受信契約、特に衛星放送の契約が毎年七十万件から八十万件伸びたことが大きいというふうに思います。
 二〇〇〇年度までは受信料を値上げしないで頑張る決意というのは海老沢会長御自身の会長就任以来の公約だと思うんですが、現在の衛星契約の伸び状況が継続されれば毎年百億円程度の増収が見込まれる。また、前回値上げ時に設置した財政安定化基金、これは四百五十六億円残されております。デジタルという問題はあるかと思うんですが、これはまた後で議論するとして、現時点でそれを横に置けば、経理上からいえば二〇〇〇年度以降も現行の受信料を維持していくことは可能だと思われるんですが、いかがでしょうか。
参考人(海老沢勝二君) 私は、公約どおり二〇〇〇年も値上げしない方針でおりますし、可能だと自信を持っております。
 御承知のように、今、日本の経済は非常に厳しい状況に置かれております。倒産の件数もふえておりますし、また失業者も戦後最高の失業者を出しております。そういう中で、受信料の滞納なり未払いというものがふえております。我々もこれに対しては非常に今苦心をしているところであります。そういう面で、一軒一軒回っていろいろお願いしているわけであります。非常に厳しい状態でありますけれども、しかしNHKを守り維持していくために、国民の理解を得るべく公平負担ということで今努力をしているわけであります。
 来年も非常に厳しい経済情勢だと思いますけれども、二・二%の増収を目指して頑張っていきたい。なかなか厳しいと思いますけれども、そういう方向でこれから努力するつもりでおります。

 

<懸念される番組の制作コストの高騰>

宮本岳志君 そこで、問題になってくるのが、デジタル化の問題がやっぱり出てくると思うんです。
 二〇〇〇年以降の問題として地上テレビ放送のデジタル化、この地上波デジタル化には総合テレビ、教育テレビ合わせて約七千の中継局の送信設備だけでも三千億円かかるという話が先ほどございました。その他に制作設備、送出設備、番組制作経費などがかかると言われております。これを二〇〇六年までの七年あるいは八年間で実施するとすれば、毎年約四百億円程度の投資が必要となると思われます。この間のNHKの建設費は毎年六百億円というふうになっておりますので、その上に四百億円といえば、まさに毎年一千億円の建設費が必要だという、計算上はそうなってくると思うんです。先ほどこれはなかなか苦しいというお話もございました。
 地上テレビのデジタル化については、視聴者、この場合は特にほとんどの国民といって差し支えないと思うんですが、その国民には内容が現時点でほとんど知らされていないと思うんです。合意の形成が極めて不十分なまま、計画だけはどんどん進められていっているという感がぬぐえないと思うんです。
 確かに、デジタル化によって多彩なサービスが可能になるかもしれません。先ほど内藤委員からもさまざまな御説明がございました。しかし、これは受信料にも影響を与えかねない問題だけに、国民視聴者の理解と納得が第一だと私は考えるものですが、いかがでしょうか。
参考人(海老沢勝二君) 御承知のように、地上波というものが全国くまなくあまねく今普及をしております。四千五百万世帯から四千六百万世帯まで普及しているわけでありますから、国民的な合意、国民的なコンセンサスを得ながらやりませんとこれは達成できない最大の課題だろうと思っております。
 そういうことで、私どもは、この地上デジタル化に当たっては、できるだけ情報を国民に提供し、国民の理解と協力を得なければできない事業だろう、地上デジタルの遂行のためにはこれは国家的事業として位置づけないと非常に大変なことだろうという認識を今持っているところであります。
 そういう中で、NHKの今の財政規模の中で賄うかどうか、送信設備等に非常に難しい点がありますけれども、これはどのくらいのスピードでやるかによっても変わってきますし、また借入金をどういうふうに調達するか、いろんな課題があります。
 私が今ここで受信料といいますか、国民に新たな負担を云々するまだ時期じゃありませんので、先ほどから慎重な答弁をしているわけでありますけれども、いずれにしても、これから周波数の確保なり資金の調達について、チャンネルプランができた段階でさらに郵政当局ともいろいろ協議をしながら一つ一つ障害をクリアしなきゃいけない課題だろう、そう思っておるところであります。
宮本岳志君 報道によりますと、IOCとJC、ジャパン・コンソーシアムとの間で二〇〇〇年シドニー・オリンピックから二〇〇八年夏季オリンピックまでの五大会の放映権料が五億四千五百五十万ドル、約六百億円という途方もない額が示されていると言われております。二〇〇二年の日韓ワールドカップサッカーについても、NHKからいただいた資料によりますと、スイスのマネージメント会社ISLが日本側に提示した放送権料は六億五千万スイス・フラン、日本円に換算して五百五十億円、まさに放送自体が危ぶまれる現状であります。これは、放送権の独占者が日本の放送デジタル化の進行する中で放送局のコンテンツ競争を激化し、高く売れると吹っかけたものだというふうにも言われております。
 NHKのことしの事業計画を見ましても、衛星放送について大型スポーツ番組の充実というのを掲げておられます。NHKは、「BSは全部やる」というのがキャッチフレーズでございますが、二〇〇〇年以降は衛星デジタル放送にNHK以外の放送局も参入してまいります。他局も大型スポーツ番組を全部やることができるようになるわけで、全部やるというのはNHKの専売特許ではなくなるわけです。
 そうした状況のもとで、大型スポーツコンテンツ獲得競争にNHKが一プレーヤーとして参加していけばますます競争は激化しかねない。コンテンツ料金がつり上がり、結局それは受信料や有料放送の料金にはね返って、お金がなければスポーツも見れないということになりかねないというおそれもございます。まさかNHKがその片棒を担ぐなどというつもりはないと思うんですけれども、BS放送多チャンネル化のもとで公共放送としてのNHKが果たすべき役割についてどう考えておられるか、海老沢会長にお尋ねしたいと思います。
参考人(海老沢勝二君) 国際的な大きなスポーツイベント、例えばオリンピックとかワールドカップサッカーに代表されるわけでありますけれども、スポーツの放送権料は、一九八四年のロサンゼルス・オリンピック以来、いわゆるオリンピックが商業路線に入って以来、本当に高騰に次ぐ高騰を続けてきたという歴史をたどっております。
 そういう中で、二〇〇二年の日韓共同主催のワールドカップサッカーが、今先生御指摘のように、日本円にして二つの大会で六億五千万スイス・フラン、一スイス・フランを八十五円として五百五十億、これに税金が一〇%かかるとして六百億です。これを二つに分けても三百億、これまでの私どもの放送権料の五十倍という法外な値段であります。
 ちなみに、来年九月のシドニー・オリンピック、これはNHKと民放とジャパン・コンソーシアムを使って交渉しているわけでありますけれども、これが一億三千五百万ドル、日本円にして百二十円として百六十二億ぐらいです。オリンピックの倍の値段という、これをもってしてもいかに高額かというのがおわかりだろうと思います。
 私どもは、衛星放送で冬のオリンピックあるいはワールドサッカーを放送したわけでありますけれども、ワールドサッカーは御承知のように、これまで五つの大陸の放送連合が一括して購入したものでございます。二十年前からNHKだけが日本では放送する、当時はそれほど世間には関心がなかったスポーツであります。したがって、ワールドサッカー・フランス大会は六億足らずの料金であったということでありまして、私どもがすべて放送しましたけれども、法外な値段ではありませんでした。今いろんな面で、大リーグなりあるいはゴルフなり、非常に高い値段がありますけれども、私どもは余り高い値段では買わないということで、一部民放さんに放送権を奪われてしまったという例もあります。
 いずれにしても、私どもは国民の受信料で賄うという企業体でありますから、やはり世間から見て妥当な値段でなければ購入しないというのを原則にしております。
 したがって、二〇〇二年のワールドカップにつきましても、民放と共同歩調をとりながら、またヨーロッパ各国の動きを見ながら、非常に厳しい交渉になると思いますけれども、粘り強くこれから交渉に当たりたいと思っているところであります。

 

<年次計画に基づく努力をNHKが約束>

宮本岳志君 次に、字幕放送についてお伺いいたします。
 字幕放送の充実にNHKが大変努力をしていただいているというふうに私どもも受けとめております。NHKは民放に比べて字幕放送の一週当たりの放送時間も九九年度の予算では二十八時間二十四分と非常に高くなっております。総合チャンネルのほかBS第二チャンネルでも字幕放送を開始し、さらにことし一月から教育テレビでも開始するなど、前進は視聴者からも喜ばれております。しかし、米国は七〇%実施しておりますし、英国の五〇%等々に比べると、字幕放送、字幕番組の実施状況はまだおくれているという面もあると思うんです。
 それで、これの充実ということを繰り返し求めてきたわけですけれども、先日の衆議院での我が党の矢島委員の質問に対して、質問の趣旨がよく通じなかったのかもという気もするんですが、毎年度の目標として、二〇〇七年までスケジュールをあらかじめ示すことを求めたのに対して、なかなか明確な御答弁をいただけませんでした。
 民放の現状は、東京キー局でもまだわずか四%と四〇%の目標に対しても大きく立ちおくれている現状です。NHKには公共放送として我が国の放送発展のために先導的な役割が求められているということはよく自覚していただいていると思うんですが、こういう分野でこそ一層先導的な役割を果たしていただきたい、ぜひ二〇〇七年に向けた毎年のスケジュールをはっきりさせていただきたいと思いますが、海老沢会長、いかがでしょうか。
参考人(河野尚行君) 字幕放送につきましては、国会でもたびたび議論をいただいておりますが、総合テレビにつきましては平成十二年度までの年次計画がございます。衛星の第二テレビもそうでございます。教育テレビについては平成十三年度までの年次計画がございます。
 そこで、二〇〇七年までに可能な番組にはすべて字幕を付与するという郵政省の行政の指針がございますが、総合テレビ、衛星については平成十二年度中、それから教育テレビについては平成十年度中に二〇〇七年に向けての年次計画を立てるべく努力をすることをお約束したいと思います。
宮本岳志君 郵政省にお伺いいたします。
 郵政省のガイドラインが言う二〇〇七年四〇%というのは、五八%あると言われているニュース、生番組、バラエティーやワイドショーなど字幕付与が難しいとされている番組を除いて一〇〇%やり切るという目標だと思います。決して上限を定めたというものではないわけであります。
 ニュースについても、先日の衆議院の審議で、郵政省からニュース原稿自動読み取りは現在八合目まで来ているという御答弁もございました。この技術開発が進めば目標を五〇%、六〇%と引き上げていくのは当然のことだと思います。NHKについては毎年予算で計画を持って進めているけれども、民放は大きく立ちおくれている、そして進んでいるNHKも四〇%を目指してということになっております。
 二〇〇七年四〇%は事実上の上限や努力目標になったのではだめでありまして、この点で郵政省として、NHKはもちろんですが、民放からも定期的に進捗状況、実施状況をつかんで、今後の計画を把握してしかるべき対策を講じるべきだと思いますが、いかがですか。
政府委員(品川萬里君) 今先生御指摘になりましたとおり、私どもでお示ししました字幕放送普及目標というのは、今の技術水準を前提にしておることでございますので、今後、技術革新の成果を取り入れることによってこれはもっと膨らみ得るものであるし、そう願っておるところでございます。
 それから、字幕放送の普及計画でございますけれども、今とにかく大事なことは、何かやれと言われてやるのではなくて、放送会社みずからが認めて積極的に取り組んでいただくということが大事でございます。
 そういう意味で、私ども、今そういった方向におられますので、今直ちに計画を取り寄せてというふうには思っておりませんけれども、今後、進展状況のいかんによりましてはその計画を見せていただくことが有効であるということになれば、そのときはまたそのように考えたいと思います。
 以上でございます。

 

<字幕付与の義務化が必要な民放の現状>

宮本岳志君 私は新米ですので、この質問を準備するのに改めてこの問題について一から勉強させていただきました。
 字幕放送の拡充は、視聴覚障害者の皆さんの大きな運動と国際障害者年などの国民世論の高まりの中で、九六年六月十九日、当委員会において超党派で請願が採択されたことが大きな契機になりました。衆議院でも同じ趣旨の請願が採択されておりますが、その請願では、すべての耳の不自由な人がテレビ放送を楽しめるようにテレビの字幕放送を義務づけることが要望事項となっております。
 また、九六年四月二十三日の視聴覚障害者向け専門放送システムに関する調査研究会報告、ここでは、「放送事業者の社会的責務をより明確化し、原則として、地上放送に係るすべてのテレビジョン放送事業者に対して、字幕放送の開始を義務付ける方向で検討を行うこと」、こうされております。義務づけの方向というのが原点であります。
 これらを受けた放送法の改正では、放送事業者の自主性に配慮をして、先ほどおっしゃったように自覚的取り組みに期待をして字幕放送、解説放送の実施についてできる限り多く設けるようにしなければならないという努力義務規定にしたわけであります。私たちは、これに基づいて進むことを強く期待してまいりました。
 しかし、二年近くたって、このままでは四〇%すらままならないという現状も事実であります。国会が国民から負託された趣旨は、テレビの字幕放送の義務づけでありますから、自主性に信頼し、努力義務を求めた現状では進まない、そして郵政省はそれに基づく計画すら掌握しようとしないというようなことが続けば、国民の負託に照らして国会として義務化という措置をとらなければならなくなるというのも当然の筋だと、筋としてはあると思うんです。
 郵政大臣、前進させるためにどう頑張るのか、ひとつ決意をお伺いしたいと思います。
国務大臣(野田聖子君) 聴覚障害者の方向けの字幕番組につきましては、先生もちろんのこと、衆参大勢の先生方からも御要望があり、私もその都度、誠心誠意おこたえしてきたつもりでございます。
 ただ、繰り返しになりますけれども、まだまだ技術的な面で伸び悩んでいるところもあり、郵政省としてはまず制度の改正、先ほど申し上げたように、放送法の改正をして免許を不要にしたとか、そういうところと、努力義務で放送事業者の積極的な取り組みに期待する、特にNHKを初めとして積極的に取り組んでいただきたいと。それと同時進行で、やはりそういう技術に関しては私たちの研究開発でサポートしていこうと。それが先ほどの八合目という話になるわけです。
 いずれにしましても、たゆまなく努力をし、検討をし続けていくことをお約束すると同時に、今話題になっております放送のデジタル化によりまして、データ放送を活用することによって、今足踏みしているような問題も迅速に解決の方向に向かっていくんではないかと。
 ですから、二〇〇七年までの目標に関しては、やはりこれからも精力的に、積極的に進めていきたいと思っていますので、御理解いただきたいと思います。

参考人(河野尚行君) 先ほどのお答えの中に、総合テレビは平成十二年度までに、これまでの年次計画があるので平成十二年度中に次の年次計画を立てます、教育テレビについては平成十三年度までに、これまでの計画がありますから次の計画は平成十三年度中に立てますというふうに私は答えたつもりですが、平成十二年度中が平成十年度中、それから平成十三年度中が平成十年度中というふうに聞こえたということがございましたので、訂正させていただきます。

宮本岳志君 終わります。


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