6月4日 憲法調査会(「平和主義と安全保障」に関する公聴会)

    イラク戦争を正当化させなかったことに国連の役割 

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<安保理が公開の議論をしたことの意義>
<日米同盟の是非についての議論が必要>
<憲法と両立する有事法制はあり得ない>

 

 

<安保理が公開の議論をしたことの意義>

宮本岳志君 今日は四人の公述人の皆さん、本当にありがとうございます。日本共産党の宮本岳志です。
 まず、北川公述人にお伺いしたいと思うんです。
 北川公述人は大きな歴史の流れについて公述をされて、そして、世界の大きな流れがやっぱり戦争の禁止といいますか、戦争の不法化という方向に進んできたということをお話しになりました。
 それで、今回のイラク戦争をめぐる動きをとらえて、一部に国連無力論というのを説く向きもあるわけですけれども、私はそういうふうには考えていないのです。先ほど大井公述人もちょっと触れられましたが、イラク戦争に至る経過の中で、少なくとも昨年九月から今年三月に掛けて国連安保理を舞台に激しい外交的な戦いが繰り広げられた、そして、超大国の戦争を半年にわたって食い止めたというのは非常に大きな歴史的意義を持つものだと考えます。
 例えば、ベトナム戦争などを振り返ってみますと、十数年に及ぶあの残虐な戦争において国連は正に無力だった、侵略を抑制する何らの効果的措置も取れなかったということに照らしても、今回の安保理の流れというのは大きな歴史の進歩を私たちはそこに見なければならない。結論がアメリカによる戦争という方向に行ったということとは別に、これはしっかり見る必要があるというふうに考えるわけですが、是非この点について北川公述人のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
公述人(北川善英君) 先ほどの平野議員、そして今の宮本議員のお二人とも共通されているのは、やはり国連の安保理事会がアメリカのイラクに対する武力行使に正当性を与えられなかったことは無力ではなく、むしろこれはこれで一定の役割を果たしたという点では私も同感いたします。しかも、私が付け加えたいのは、この武力行使に、アメリカの武力行使に対するお墨付きを与えないということが五大国の拒否権行使を伴わないで行われたというところに私は注目しております。
 これはどういうことかといいますと、もちろん五大国それぞれ政治的な思惑はあるんでしょうが、むしろ重要なことは、安保理事会自体が一種の公開のフォーラムで議論をきちっと検討したこと、そして、世界的な様々な反戦運動があり、それを背にして拒否権を使わないで武力行使の正当化も与えなかった。その意味では、実は冷戦下の安保理事会の在り方とやはり今回は非常に変わってきている、そういった点で私は高く評価したいと思います。
 以上です。
宮本岳志君 ありがとうございます。
 大井公述人にお伺いしたいんです。
 大井公述人は、レジュメの最後に、「今、政治家の人たちに言いたいこと」というふうに書いてくださっております。若い学生、有能な学生である大井さんのような方々の御意見を率直に我々政治家が聞かせていただくというのは非常に有意義なことだと思っておりますけれども、同時に、ナショナリズムということについても触れられておられます。ナショナリズムという点では、政治家ももちろんですけれども、最近、学生の方々とお話をしておりますと、学生の中にもナショナリズムといいますか、様々な議論が少なくないということも私たち体験するところなんです。
 一つは、政治家に対する言いたいことを述べていただくと同時に、同世代の学生の中にもそのようなナショナリズムがあるということについて大井公述人はどのようにお考えになるか、お聞かせいただけますでしょうか。
公述人(大井赤亥君) 今、宮本議員がおっしゃった二点目のことから。
 自分の経験なんですけれども、これは、僕は別に靖国神社とか、あの辺きれいなんで散歩することは好きなんですけれども、この前、九段の坂を下りているときに、隣に若い二人の僕と同年代の人が坂を上ってきたんですけれども、靖国神社も近いからいろいろそういう話をしていたのかとも思うんですけれども、北朝鮮うざいなと、本当、あんなところはとっこんでやるよと言っているんですよね。多分、特攻とそのとっこんでやるというのを掛けていると思うんですけれども、つまり、もう北朝鮮なんという国はとっこんで、本当、いざとなったらとっこんでやるよと言っているんですよね。そういう事実がある。
 だから、若い人の中には本当に、メディアの影響もありますけれども、北朝鮮に対して、つまり他国に対してあからさまにそういう分子的なことを言うのが許されるような雰囲気が、メディアの中にもあるし、それは若い人の中にも同時にあると思います。
 同時に、それ、例えば歴史教科書の問題もありますけれども、言わば歴史的な背景を知らないで今の例えば拉致事件とかそういうことを、ほぼそういうことで意識が独占していってそういう発言になるというのは、やっぱりこれは正にお互いの国の違いが広がっていくだけだというふうに思っています。
 だから、そういう意味で、日本のナショナリズムはおかしいということが言いたかったんです。
 それからもう一つ、アイルランドのことで言いますけれども、一か月いたんですけれども、例えば、イギリスからやっぱりすごい侵略の歴史を受けていて、十七世紀のクロムウェルの侵略以降ずっと従属しているわけですよね、経済的にも政治的にも。で、文化も違うのにイギリス王室に忠誠を誓わされたりすると。そういうことからナショナリズムが育っていくわけですけれども、やっぱり日本のナショナリズムと全然違って、独立闘争の歴史なんかを学ぶとすごいドラマチックだし、納得のいく背景があるんですけれども、日本のは、そうじゃなくて、やっぱり何というか、小さい方、弱い方、国内で言えば在日の人とか歴史教科書のこともありますけれども、それから、この前の東京大学の五月祭でも国会議員の方が発言をされたということもあります。ずっとそういう方向に視点が向いていって、そこで自分たちの優位性を何か保とうとするというような、有事法制の議論や北朝鮮の議論でも何かそのにおいが感じられて納得できないと思っているわけです。ですから、アイルランドのナショナリズムなんかもおもしろいなと思ったわけです。

 

<日米同盟の是非についての議論が必要>

宮本岳志君 次に、藤井公述人にお伺いします。
 私も大阪の出身ですので、大変関西弁に、聞かせていただいて自分の感覚に合うわけですけれども、先ほど日米関係が釣り合っているかどうかという議論が交わされました。一方で米軍が日本を守る、もう一方で基地を提供する、あるいは経済的に日本が負担をする、釣り合っているじゃないかという、負い目を感じることはないという議論が交わされましたけれども、私は釣り合っているかどうかといえば釣り合っていないと。しかも、それは一方的に日本の側が基地を提供し、そして米軍というのは日本を守るために日本にいたことはないし、今でも海兵隊とか遠征軍とか殴り込みを目的にして日本の米軍基地に駐留している、さらにそこに膨大な駐留経費まで日本が負担しているというのは、極めてこの米軍基地の存在そのものが釣り合うどころか大きく日本の主権を損なうものだというふうに考えております。
 そういう点では、むしろ日本の米軍基地を使ってアメリカが正にああいう世界的な規模で様々な戦争に出掛けていくということをやり、それに日本は経済的負担までしているにもかかわらず、それを何か一層進めようと、そして日本の自衛隊まで参加させようというのは、極めて釣り合う釣り合わぬ以前の問題だというふうに思っているんですが、藤井公述人の日米安保条約そして米軍基地の役割についてのお考え、そしてこれはちょっと北川公述人にも付け加えてお話しいただければ有り難いと思っております。
会長(野沢太三君) それでは、最初に藤井公述人。
公述人(藤井富美子君) 私も将来的には日米同盟という軍事同盟というのから、先ほど私が公述しましたような東アジアあるいは極東アジアでの地域安全保障機構みたいなもの、それからもう更に遠い話になるかもしれませんけれども、世界全体での安全保障としての警察軍みたいなものができれば日米同盟自体は必要ないと思うんです。そういう方向に行ってほしいという将来像を一応私なりに、素人なので幾らでも言えるので提示したわけですけれども。
 ただ、今アメリカが日本に駐留していていろんな問題を起こしているということも、私もそれは非常に遺憾に思いますけれども、ただ、アメリカがいることによって何かしらこのアジア地域に安心感を生んでいるという側面もあると思うんですよね。それだけ日本がアジア諸国に信頼されていないんだなという裏返しだとは思うんですけれども、そういう意味でも今すぐ撤退とかそういうところまで私も言われませんし、またアメリカが自分を世界の警察と自称してやっている行動に対しても、ある程度のやはり抑えみたいなものは世界にあると思うんですよ。それはある程度やっぱり今の段階では、何というか、一定の評価をしていいと思うんですけれども。
 ただ、さっきも言ったように、アメリカ自身は自分の国益で動いていますので、警察的行動も、そういったところでやっぱりもっと世界の声を集めて、本当に公正な意味での何か世界での安全保障がもっともっと国連という場でも議論され、そしてまたそれが法制化されていくことによって地域地域それぞれの国々の安全保障を将来的に作っていかないといけないなというふうに思っています。
会長(野沢太三君) 続いて、北川公述人、お願いします。
公述人(北川善英君) 私の公述の中で、冷厳なる現実を直視することを強調しましたが、実はその点からいいますと、北朝鮮もアメリカも韓国も台湾も中国もすべて仮想敵国であるわけです。このことをもう少し推し進めますと、これは藤井公述人が端的に表現されましたが、一人一人の私たち個人にとっては今度は国家が仮想敵国の可能性を十分秘めているわけですね。そういうふうに突き詰めた場合、というよりは、そこまでやはり私たちはいったん突き詰めて考える必要があるのではないのかということです。
 そうしますと、日米軍事同盟というのをどこまで信用し切れるのか。恐らく多くの政治家の方々は建前だけで信用しているというふうにおっしゃって、必ずしも本音はそうではないと思っておりますが、それならば、やはりもう少しそれを国民の前できちんと明らかにして、そして、日米軍事同盟を維持するならばどういうメリットが日本にとって、特に具体的には一人一人の個人にとってあるのかないのか、これをやはり説明する責任があるんではないかと思われます。
 他方で、多くの国民、特に財界の方々が強調されるのは、日本の経済が成り立つためにはアメリカとの密接な関係が大事だということを非常に強調されます。しかし、その強調は逆に言いますと、ますますアメリカとの関係が一方的に、良く言えば緊密ですが、悪く言いますと、アメリカが風邪を引けば日本は、SARSにはなりませんが、大きな肺炎になってしまう、そういう関係をいつまででも続けることになると思います。そういった経済の観点からいっても、やはり多極間外交、多極的な、多面的な形の国際関係を作る、そういう方向にやはり私は動くべきだと思っています。
 その意味では、日米軍事同盟を今すぐどうこうするということよりも、そういう方向性を定めた上で、そのためにできることは何なのか、それをやはりきちんと議論していく必要があると思っています。
 以上です。

 

<憲法と両立する有事法制はあり得ない>

宮本岳志君 もう時間がなくなって恐縮なんですが、林公述人に最後一問だけお伺いしたい。
 国民の基本的人権をたとえ一時期にしろ制約せざるを得ない国家の緊急時についての有事立法を、国会であろうと憲法の規定なしに行うことは不適であると考えると。これは、憲法に対する評価は恐らく林さんと私どもとは違うと思うんですが、少なくとも、今やられているこの有事法制というものが憲法と、今の憲法と両立しないという点では全く一致するものなんですね。そういう点では、基本的人権を尊重する有事法制というのはあり得ないと私は思うんですが、最後にその点について林公述人のお考えをお聞かせください。
公述人(林明夫君) 憲法の中に国民の幸福を追求する権利ってあると思うんですね。これが一番基本的な権利だ、それが一番大事だと思うんですね。
 そういうことを考えれば、戦争というのは何か、是非宮本先生も各国に行かれて、紛争の当事国、いろんなところに行かれて、アイルランド、いろんなところに行かれて、私も一生懸命頑張りますので、実際、国と国とがどんなふうな形で紛争になるのか、それを一生懸命調べ、私も調べますので先生も調べていただいて。
 それで、そのときに、本当にそんなことは、基本的人権の制約は本当はしない方がいいわけです、もちろんね。ですけれども、何らかの形で、例えば移動の自由とか、もしかしたら、ここからここは行かない方がいいよとか、そういうことはあるかもしれない。それも一つの基本的人権ですよね。あと、それから営業の自由ですね、こういうようなものは作らない方がいいとかと、いろんなことがあると思うんです。そういうことも含めて、緊急時におけるいろんな基本的人権の制約というようなことを、少なきゃ少ないほどいいんですけれども、そういうことも考えられます。ですから、そういう意味で、最小限どんなことが必要なのかということも考えておく、それも考えておくことが大事かなと思います。
 基本的には先生と同じ考えですので、それだけ誤解なきようお願いしたいと。よろしくお願いします。
宮本岳志君 ありがとうございました。



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