宮本岳志君 日本共産党の宮本岳志です。四名の参考人の皆様、大変御苦労さまでございます。
我が党は、今回の代位訴訟、四号訴訟の問題について、住民と自治体を原告と被告という敵対関係に位置付けるなど住民訴訟にブレーキを掛ける改正内容であって、住民が自治体の行財政運営の違法をただす手段であり、住民の参政措置の一環として導入された住民訴訟制度の機能を根本から奪うものだという立場で反対をしております。
<「原状回復」の手段をなくすもの>
宮本岳志君 まず、高橋参考人にお伺いしたいんですけれども、資料に日弁連の意見書を付けていただいております。
六十ページの一の後段に、今回の改正案が「「法律関係不存在確認請求」、「原状回復請求」、「妨害排除請求」を廃止している。」という問題点を指摘されておりますけれども、恐縮ですけれども、少し時間の関係で分かりやすく、しかも端的に御説明いただけますでしょうか。
参考人(高橋勲君) 先ほどちょっと申し上げたところではありますけれども、今御指摘のように、財務会計行為の相手方に対する法律関係不存在確認の請求、原状回復請求、妨害排除請求が廃止されていると、私はこれは問題だということを御指摘申し上げました。
それは、具体的に申し上げますとこういうことなんです。例えば、具体的なケースでいうと払下げ、土地を、公有地の払下げがあったとする、問題が起こったとします。その当不当は最終的には司法判断を仰ぐことになるけれども、その払下げが違法だとした場合ですね、違法かどうか争われている、違法だとした場合に、それが払下げの相手方のところにまだある段階で、まだあるわけですよね。
AならAという業者のところに払下げがあった。そこに移転を、所有権の移転がされた、あるいは占有が移転された。だけれども、そこにまだある。まだある。工事がまだ着工していないというふうな場合に、それを直接住民の、住民参加のこの制度を、現行制度を活用して直接それを市に返しなさい、なぜならばそれは違法だからだという、この制度自体を何で消す必要があるのかということなんですね。
今回の改正が通ってしまうと、結局は二段階、二段目の訴訟で損害賠償の請求を自治体がその業者に対してやらなきゃいけない。要するに、こういった払下げのようなものについては原状回復の措置じゃなくて、結局、後で損害賠償を払わせればいいだろう、金銭解決すればいいだろうという、そういった考え方が導入されようとしていることについて、現場の住民のサイドに立っていろいろとやっている弁護士としては、これはどうもおかしいというふうに私どもは問題提起しているわけです。
それが、そこまで、例えば土地の問題について、払下げの土地の問題を言ったんだけれども、払下げ手続をまだやっていない、まだ市のところにある。それについては一号、二号請求でそれを差し止めるということはできますわね。渡してはならないよという、所有権移転登記しないようにさせるという。
だけれども、その場合に保全処分が、制度を活用できない。結局は、やっちゃったらどんどん払下げの行為が進んでいっちゃうと、それを止めるすべがなくなってしまう。そうすると、本来の趣旨である自治体の財産をしっかりと守ろうと、その責任者に回復させ、てん補させようというその制度の趣旨が没却されやしないか。それまでなくするのは納得できない、こういうことです。
宮本岳志君 なるほど、よく分かりました。
六十一ページには問題点の第二として、なれ合い訴訟の危険についての指摘もございます。少しこのことについて御説明いただけますか。
参考人(高橋勲君) これは議論があるところですが、二段訴訟には住民が法的に参加する道がありません。ありません。ですから、二段訴訟の審理の中で、その審理がどうなるかについては議論がありますけれども、和解で解決するということはあり得ると考えています。
もちろん、和解する場合にはその議会の承認が必要でしょう。しかし、それは先ほど来出ているような、これほど多くの損害を払わせるのはかわいそうじゃないか、気の毒じゃないかという議論も含めて、第一段訴訟で認容された金額とは無関係に解決してしまうということがあり得る。
そうなると、例えばの話です、法律というのは例えばの話を積み重ねながら制度設計しなきゃいかぬということですが、例えば第一段訴訟で、義務付け訴訟ですから、義務付けられた金額を大幅に下回るような和解をした場合に、今度は住民サイドから見てそれはおかしいじゃないかと、その和解の仕方はということで、もう一回監査請求からやり直すという、そういったことにもなりかねないのではないかということを私は指摘をして、表現は別として、なれ合い的なというふうな表現をちょっと使わせていただいたんですが、そういったことも今度の訴訟の場合、そういうちょっと問題が残るよという御指摘でございます。
<オリックス会長も法案の内容を批判>
宮本岳志君 昨年の九月十三日ですね、私の手元に司法改革フォーラムの第八次提言というものが届きました。これは、会長は旭リサーチセンターの鈴木さん、副会長は森ビル社長の森さん、それからオリックス会長の宮内さんや経団連の方も加わっておられます。
この住民訴訟の見直し案を廃案にとする提言を見せていただくと、我が国でようやく根付き始めた草の根民主主義を一挙に後退させるものだという指摘。そして、結論は、国会は国権の最高機関として、見識に照らし、責任を持って確実に廃案とすべきであると、こういう提言なんですけれども、内容を読ませていただくと、先ほどの高橋先生の、また日弁連の御意見に驚くほどぴったりと一致したような中身になっておりますけれども、先生、この提言は御存じでしたでしょうか。そして、もし御存じでしたら、どのようなふうに受け止められましたでしょうか。
参考人(高橋勲君) 今、先生から御指摘されて、ああ確かにそうだ、あったなというふうに記憶を呼び戻しました。と申し上げますのは、簡単に言いますが、司法改革問題が今、日弁連挙げての大問題でございまして、経団連の方々や日経連の方々とも意見交換をしております。
この司法改革フォーラム、たしか鈴木さんが会長さんでしたか。
宮本岳志君 はい。
参考人(高橋勲君) 宮内さんは規制改革、規制緩和の問題などでも非常にリーダー的な役割を果たしておられる方々と、日弁連の意見の方が早かったんですけれども、この問題については、あれ、これはえらい似ているなということで話題にしたことを覚えています。
それは結局、司法改革フォーラムの方々の司法制度改革に関する意見は、先ほど冒頭に私言いましたように、やっぱりいろんな矛盾が出るだろうと、規制緩和していくこの社会に。そういう場合には司法解決がやっぱり大事だと、司法的解決が。その場合に、裁判を受ける権利を実質的に保障していこうじゃないか。そのために弁護士も増やそうとかいろいろ議論あるでしょう。そういった立場から今回の問題について見た場合に、どうも住民の裁判を受ける権利の制限というか、そっちにつながるのではないかという、そういう大局的な判断に立った意見書だというふうに記憶しています。
私も、そういう意味では、日弁連とこの方々との意見がこんなにぴったりというか、一致するというのはちょっと余り体験がないので印象に残っているものでありますので、十分参考にすべき意見だというふうに考えています。
以上です。
宮本岳志君 ありがとうございます。![]()
答弁する田中参考人(左)と高橋参考人
<合併で役場のマンパワーが削られる>
宮本岳志君 続きまして、田中参考人にお伺いをいたします。
政府は、自主的な合併と言いながら強力に推進すると、大変矛盾した言い方をするわけですけれども、今日御紹介いただいた市町村合併に関するアンケートを見ても、町長さん、村長さん等の苦悩がにじみ出ているというふうに思っております。
それで、合併を進めると自治体が効率化するという議論もあるんですけれども、自治体に働く労働組合の皆さん、自治体の職員だから反対するのは当然だと、こういうふうに見られることも多いのかもしれませんけれども、合併ということが進みますと、じゃ一体何が効率化するのかと。現実に地域住民の皆さんのところでどのような結果が今進められようとしているかということについて、現場でおられる皆さん、是非御意見、現実を語っていただきたいと思います。
参考人(田中章史君) 合併推進論のもう一つの、二つの側面があると思うんですが、広域化をするという側面と市場化をするという、今の規制緩和の流れの中で自治体業務を市場に任せていくという流れがセットになって市町村合併問題が進んでいるんではないかというふうに私たち受け止めていまして、その際に、その効率性という議論が、いわゆる経済的な効率性のみが強調されていくんではないか。そこがやはりこの合併問題の効率性の議論の際に極めて重要な点ではないかというふうに思っています。
具体的に合併が進んでいきますと、この間幾つかの調査もしたわけですが、いわゆる町役場があったところが出張所になり、そこが一年もたたない間に支所になり、具体的に言いますと、例えば九十人ほどの職員が町役場や村役場にいたとします。これが、出張所になって二十人ぐらいになって、最終的には支所としていわゆる十分の一ぐらいに減っているというのがどこの合併の例を引きましても実態として現れてきていまして、いわゆる市町村の場合に、特に住民の暮らしを支える組織として住民が、やはりマンパワーが基本的な役割として重要だと思うんですが、このマンパワーが効率性の名前の下に削減をされていってしまうと。その結果、財政的には効率的な、交付税なども国から出さなくて済むような、そういう財政効率だけが強調されていくというのが現状ではないかというふうに思います。
私ども、労働組合ですから、何かすぐ反対というふうに言われるんですが、実は身内の中でもこんな強制合併もっと反対で旗振れという声もあるんですが、自治体労働組合としましては、町の主権者である住民が町の在り方を決めるんだ。これは、先ほど上尾の例でお話を申し上げましたけれども、上尾の労働組合も、最初、住民投票の問題、戸惑いました。しかし、最終的にやはりその町の在り方を決めるのは住民だということで、住民投票制度を活用して、本当に我が町の在り方を議論をしよう。この場合には、財政効率の問題もそうですし、サービスの問題がどうなるのか、マンパワーがどうなっていくのか、そういう問題も含めてこの町の将来をどうしていくのかという視点で、またとりわけ自治体とはそもそも何なのかと。住民の暮らしを守る基礎的組織だということを前提にした議論として発展をさせてきたというのが私どもの取組でございます。
宮本岳志君 ありがとうございます。
私どもも、先ほど田中参考人が述べられたように、この合併協議会の設置という初期の段階で住民投票を導入する、しかも一方的な設置のみの導入ということじゃなくて、合併そのものの可否を問うその住民投票を行うべきであると、そういう修正案も準備をさせていただいております。
上尾の例などを読ませていただいても、このやっぱり合併の可否を問う住民投票ということであれば随分市民の中での議論が活性化したと、こういうことも聞いておるわけですけれども、少しその辺のところを端的にお話しいただけますでしょうか。
参考人(田中章史君) 私どもの「季刊自治労連」というのを資料の袋に入れさせていただきましたが、その中に、三十九ページから上尾の渡辺委員長が住民投票についての記述をしておりまして、是非後で参考にしていただけたらと思いますが、極めて特徴的だったのは、条例そのものは合併推進を進めるJCの皆さんですとか地元の商店の社長さんですとか商店主の方々が中心で進めたわけですけれども、この議論の進め方として、賛成派と反対派ということで対立するんではなくて、我が町をどうするのかということが本当に問われているんだと。
その立場で、ジョイントの、四十ページの下の方にも、条例が成立してからは推進派のあげおの未来・反対ジョイントミーティングを二回やったと、およそ八百人が参加をしたと。この運営についても、賛成派と反対派の代表が十五分ずつ意見表明をして一時間のディベートを行ったと。その討論についても、賛成の人も反対の人も疑問に思っている人も平等に討論ができるようにしようという取扱いを市民サイドで進めたというところが極めて重要なところでございまして、ここが、その後インターネットやホームページを使った、様々な媒体を使って市民的な議論に発展をしていった。
ここが上尾の教訓でありましたし、特にやはり入口での投票ではなくて、合併の是非を問う投票ということでは、正にその新市計画も作り、将来像も言って議論をした上で最終的に住民の信を問うということを、議会の議決として条例という手続を進めたというところが、住民が本当に、投票率に現れていますように、積極的にこの討論に参加をし、議論を発展させてきたということではないかというふうに思っています。
<違法な命令は拒否する権限を職員に>
宮本岳志君 我が党は、修正案の中で、代位訴訟の廃止に関する改正についてもこれを削除する修正案を準備をしております。
仕組みは、現状を維持したまま、職員は、その上司から違法な行為をすることの要求を受けたときは、その理由を明らかにし、当該上司に該当行為をすることができない旨の意見を表示しなければならない。職員が意見の表示をしたにもかかわらずこれを上司がやらせた場合には、その要求した上司が責めを負うというふうに同時に付け加えさせていただきました。
これは、最後に高橋参考人それから田中参考人の両方にお伺いしたいんですが、私どものこの修正案の立場、つまり代位訴訟の廃止はきっぱり削除するという修正案の立場についての参考人の御意見ということと、特に田中参考人には、今日御紹介いただいた「自治体労働者の権利宣言」という案の中で「自治体労働者は、首長・上司などの職務命令に対し、その内容に重大な瑕疵がある場合、及び職務命令の遂行が自治体労働者と住民の基本的人権を侵害するおそれがあるとき、これを拒否する権利を有する。」と、こう高らかに宣言されている労働組合の立場として、是非この代位訴訟についても我が党改正案についての参考人の御意見をお伺いしたいと思います。お二人にお願いいたします。
参考人(高橋勲君) 代位訴訟制度の全面廃止について削除ということについては、先ほど来、日弁連の考え方と一致しているわけでございますが、職務命令に対する一般職員のお断りする権利といいましょうか、それなどはこれは考慮に値するのかなというふうに考えています。
つまり、この制度の目的というのは、地方公共団体の財務会計の明瞭化というか、それは是正をしていくという、それが根本なんだけれども、それはやっぱり一般職員の方々の義務そして権限と首長さんなどとのこれは違いがはっきりありますから、やむなく職務命令に従わざるを得ないにもかかわらずという方々がたくさんいるので、それはどうかなという世論もあると思いますので、その辺の制度設計は少し考えてみる必要があるのかなと。現実の場合は過失のレベル論でしんしゃくはできると思いますけれども、それを更に制度に高めていくという検討は必要かなと思います。
参考人(田中章史君) 修正案についての見解ということにつきましては、自治労連として公式に見解を表明することはちょっとできません。
ただ、私ども労働組合の中に弁護団という組織がございまして、この弁護団の中で代位訴訟問題についての議論をした経過がございます。
ただ、残念なことに、先ほど来からも様々な御意見がございますように、私ども弁護士の間でも基本的な一致点が、法案に対する見解が統一できませんで、先ほど意見陳述させてもらいましたように、国民の参政権の保障というその制度の精神をゆがめるという点では問題だということは明確になっておりまして、そういう点だけ申し上げて、どのようにすればいいのかというようなことについては意見は差し控えたいというふうに思います。
同時に、職務命令の問題につきましては、先ほど来からお話ししましたように、瑕疵ある命令に対しての拒否権、それから公務員の意見表明権、これは非常に今大事ではないか。
とりわけ、公務員制度改革大綱ができていますし、特に地方自治体のところでは業績評価ですとか成績主義とかという賃金と職務の在り方の問題についてリンクされた制度が強制的に導入されていまして、物が言えない、気が付いたことも発言できないという職場環境も残念ながら作られてきています。
よく市役所など、町役場などの雪印化だということなども指摘をされているわけですが、雪印事件などのようなことを自治体の中で起こさないためにも、意見を表明したり問題があることについてはきちんと意見を述べる。これは憲法の規定、地方公務員法の規定から見ても当然認められるべきではないかというふうに思っていまして、そこは是非進めていただきたいというふうに思います。
宮本岳志君 ありがとうございました。