2月20日 憲法調査会公聴会(地方自治に関する公述人への質疑)

        憲法上も問題が多い地方自治法の改正案 

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<地方議員の定数に法定の上限は無用>
<政令市の行政区にも公選制の議会を>
<合併の是非を問う住民投票こそ必要>

 

 

<地方議員の定数に法定の上限は無用>

会長(上杉光弘君) 宮本岳志君。
宮本岳志君 本日は、四人の公述人の皆さん、誠にありがとうございます。日本共産党の宮本岳志です。
 まず、池上公述人にお伺いをいたします。
 先ほどのお話の中で改正地方自治法の積極面について触れられた後、改正地方自治法における消極的側面ということもお書きになっておられましたけれども、時間の関係上飛ばされたように思うんですけれども、少しこの点にかかわってお話しいただけることがございましたら、お話しいただきたいと思います。
公述人(池上洋通君) 私のレジュメの三ページのところに、三ページのちょうど真ん中の辺りに「(6)改正地方自治法における消極的側面」ということについて二行にわたって書き出しをいたしております。
 第一番目は国による関与規定の問題点でございます。
 先ほど申し上げましたように、特に自治事務に対しては特別の配慮が必要であるということを第二条第十三項で規定している地方自治法でありますが、この地方自治法の中に盛られている関与規定のうちには、自治事務に対してかなり厳しい、一般的な関与が行うことができるというふうになっている部分がございます。
 しかし、特に私が重要だと、重大だと考えておりますのは、これはこの改正地方自治法がかかった国会でも盛んに議論になった点でございますけれども、特別な場合といえば特別な場合ではありますが、自治事務に対して代執行、国によるあるいは県による、市町村に対しては県によるも含む代執行までできるという規定が実は盛り込まれている点であります。自治事務に対して代執行ができるというのは余りにも権力的過ぎるということで、これは繰り返し議論になったはずのところでございますが、実際の法規定はそのまま言わば今日なっているわけでありまして、私は今後の地方自治法の改正問題で是非このことは正面から考えていただきたいと考えております。
 これは代執行に限らずでありまして、許可、認可等々の本来法定受託事務にのみ適用されると分類をされております関与の規定が、事情によってはかくかくしかじかという言い方ですべて自治事務に適用できるという法体系になっています。これは必ず禍根を残すと私は思っておりまして、この点をまず率直に申し上げておきたいと思います。
 それから、第二番目にここに書き出しておりますのは、先ほども木村委員さんの方からお話がございましたが、議員定数の上限法定ですね。
 これは、私は、議員定数について、本来の地方分権を考えるのであるならば規定すべきではないと、地方自治法が。といいますのは、議員定数といいますのは自治事務中の自治事務の一つのはずなんです。ですから、そういう意味で申し上げますと、議員定数の規定を置くこともさることながら、上限を決めるという、この今日の在り方については大変私は問題があると。少なくとも基準値を置いて増やすことも減らすこともできるんだということでなければ、何のための分権であろうかということに当然なるわけでありまして、私はこれは非常に重大だと考えております。
 といいますのは、実は本当に地方分権をやろうとしますと、当然条例をもって執行するわけでありまして、法治の仕組みが前提でありますから、優れた条例を作ろうと思いますと、地方議会の力を低くしてそんなことが実現できるはずがありません。ところが全国的傾向を見ますと、議員定数の削減をもって良しとする流れが非常に強まっているんですね。私、これは危ないと思っているんです。こんなことを広げてしまえば、立法する能力を地方自治体は次々失っていく。しかも、それが今日、市町村合併と重なっておりまして、信じ難い削減計画になってきているんです。これはもう大変まずいことだというふうに率直に考えているところであります。

 

<政令市の行政区にも公選制の議会を>

宮本岳志君 ありがとうございます。
 もう一問、池上公述人にお伺いしたいんですが、先ほど来の議論で、政令指定都市の県からの独立というような議論もございました。都道府県の空洞化というようなことも議論の中に出されてきております。
 我が国の地方自治制度は二層制という原則を持っているというふうに考えるんですけれども、この点についてどのようにお考えになるかということと、もう一つは、山本公述人の方から広域連合の問題点について御指摘がありました。この点について池上公述人はどのようにお考えになるか、お願いいたしま
公述人(池上洋通君) 最初に、大都市の問題について一言申し上げたいと思います。
 私は、先ほども御発言がございましたが、大都市につきましては、先ほどお話にありましたように、特に政令指定都市に典型に見られることで申し上げますと、今日、行政区と言われているところにすべて政治的権限を与えるべしというのが私の意見でございます。つまり、議会を持って、しかもその議会はでき得るならば選挙制度によるもの、選挙制度による議会をきちっと構成をして、住民が政治的に参加のできる、行政の参加だけでは駄目なのでありまして、政治的に参加をできる仕組みを明確に作るべきであるというふうに考えております。
 といいますのは、横浜市、川崎市、様々の政令指定都市に、私、ほとんどすべての政令指定都市で研究会をこれまで経験をしておるのでありますが、行政の当局者の皆さんと共同の研究会などをやってみますと、結局出てくるところは何かといいますと、住民の力をどう結集できるかということに本当にエネルギーを注いでいるわけであります。そうだとするならば、今日の言わば行政区と呼ばれるものに思い切って言わば民主的な力を与えるということが基本ではなかろうかと率直に思います。そうしたことを考える中で、先ほど御意見ございましたが、県との関係をどうするかというふうに考えるべきではないだろうかと思っています。
 それからもう一点、二層制のことですが、これは、先ほどお話しのありました道州制とも多少かかわると思いますので、そのことも視野に入れて一言申し上げたいと思います。
 私たちの国の地方自治制度の中で最も優れていると私などは考えておりますのはこの二層制の原理でございまして、特に、これも先ほど言及がございましたが、補完性の原則というものを私たちが考えるときに非常に重要な意味を持っていると考えております。
 つまり、市町村が様々な条件の下でなし得ない住民サービス、しかもそれは、欠かすことのできない住民サービスをどうするかという問題は絶えず出てくる問題なのでありまして、それをどのように補完をし、補完といいますのは代執行と違いまして、言わば市町村を優先するという考え方に立ちまして、これシャウプ勧告の思想でありますが、市町村を優先するという原則に日本の地方自治は明確に立っておりますから、そうしたものの上に補完をしていく。都道府県がそれを補完する、都道府県が補完できないものは国が補完をするという原則に立っておるわけでありますけれども、そういう意味では、特に地方自治における言わば補完の原則が有効であるそうした仕組みは都道府県制度においてどうであるか、広域地方自治体においてどうであるかという観点にしっかり立つべきであるというふうに考えておるわけであります。
 これは、このことが明確にならない限り、市町村の自立をどんなに叫んでもあいまいなまま終わることは明らかでありますので、そうしたことを明確にしたい。何か大きな言わば自治体を作っていくと都道府県は要らなくなって道州制だというふうな話が盛んに出てくるのですが、そんな簡単なものではありません。
 例えば、アメリカ合衆国は我が国の二倍の人口でありますけれども、州は五十州であります。ということは、仮にアメリカと同じ平均人口の道州制を導入するといたしますと、今の日本の都道府県を二つずつくっ付けて州にしてしまえばいいわけでありまして、そういうことなのかということを本気になって考えなきゃいけないときだと私は思うんですね。
 そういう意味でいいますと、私は理論的に道州制を論じることは反対だというふうな立場ではございませんけれども、現実の市町村の政治と行政、そして都道府県が果たすべき市町村に対する補完の丁寧な組立てを考えるならば、今日の都道府県のレベル、大きさが適切であるというのが私の率直な思いであります。
 以上です。

 

<合併の是非を問う住民投票こそ必要>

宮本岳志君 舩津公述人にお伺いいたします。
 合併に異論ありという勇気ある発言をされておられますけれども、市町村の規模についてどういう規模が適正かは、それは住民自身が決めるものだというふうに私どもも考えております。先ほど池上参考人も別の方の質疑の中で述べられましたが、私どもは、少なくとも合併に当たっては住民投票が必要なのではないかと。鳩ヶ谷で住民投票を行って、これは分離といいますか、市を作ったという経験にも照らして、合併に当たっては住民投票が必要なのではないかという考えについてどのようにお感じになるでしょうか
公述人(舩津徳英君) 合併にはいろんな歴史的、文化的、地域的なものがありますから、そこに住んでいる方々の住民投票が必要だと思います。
宮本岳志君 今、実は当院に地方自治法の改正案というものが出されておりますけれども、住民投票については合併を促進する方向での住民投票だけを規定しておりまして、私どもは、いずれにせよ住民の投票を最終的にすべての場合において実施するという修正案を今準備をしているところでございます。
 それで、次に、松井公述人にお伺いをいたします。
 先ほどのお話の中で、憲法二十五条のナショナルミニマムの保障という話がございました。これは国の責任だというふうに私どもは考えるわけです。国の責任ということを考える場合に、それは財政的保障を伴うものでなければならないことは言うまでもないと思うんですね。先ほど福祉施設費への国費負担が減らされたという話も資料で出されておりましたけれども、この点についてどのようにお考えになるかをお聞かせいただけますか。
公述人(松井圭三君) 憲法二十五条の生存権というのは国の、本当の最低生活、これは国が保障するということですので、基本的にはもう国が国民の最低生活を守らぬといけませんから、制度とかお金とかいうことを、やっぱり何といいますか、国が準備しないといけないと。
 ただ、今、地方分権という流れですので、憲法の二十五条の、国だけではなくて地方自治体という意味もとらえまして、地方自治体に例えば事務を移譲するのであれば権限、財源を移譲しないといけないんじゃないかということですね。
 それから、先ほどの措置割合、措置の費用負担の割合がだんだん少なくなっておるということなんですが、基本的にはあれですね、地域に、つまり市町村また都道府県に税財源を移譲しないとやはり住民の負担になるので、中途半端な感じですか、中央集権なのか地方分権なのかよく分からないような感じがいたしますね。
宮本岳志君 山本公述人にお伺いいたします。
 通達行政について批判をされたくだりの中で、公共事業の推進役になっている五か年や七か年の長期計画にお触れになっておられます。
 我が党は、六百三十兆円の規模で行われようとしている公共事業基本計画、これに基づく長期計画が無駄な公共事業の推進役になってきたということを一貫して批判をしてまいりました。また、それが政官財の癒着によって進められてきたこと、そしてそれが地方財政危機の原因になっているということも指摘をしてきたところでございますけれども、この点について山本公述人のお考えをお聞かせいただいて、私の質疑を終わりたいと思います。

 

<地方自治法の改正案は「違憲です」>

公述人(山本節子君) 通達行政は今の日本の官僚システムがやっている一番根本的なところなんです。
 それで、私はこの本の前に「土地開発公社」という本を出しまして、土地問題から政治とか経済とかのシステムに入っていますから、非常にいろんな緻密なあれを積み重ねて推論しているんですけれども、そこで絶対切り崩せない部分があるんですね。それがどこかというと、産業と金融界の連合体なんですよ。基本的にいろんな公共事業のアイデアを企業が持ってきますね。企業が持ってきて、それを受けてシンクタンク、今シンクタンクとかが物すごく、ちょっとのさばっているという、余り表現は良くないんですけれども、すごく大きくなっていろいろ問題をこれから起こすかもしれませんけれども、それと一緒になって、いかにももっともらしい五か年計画、七か年計画を作り出すわけなんです。
 さっき言ったように、閣議決定で非常に大ざっぱに、これから何年かの間に何兆円という感じでばさっばさっと決めてしまう。そこは全然国会、関係ありませんよね。非常に簡単なんです。それは、持ってきた人間のところに全部事業が返っていく、それがあらゆる省庁が絡んでいるし、あらゆる産業界が絡んでいるんです。そこで、もちろん金融界も非常に暗躍しますし、ですから、こういう形で通達行政をこのままにしておくというのはもう腐敗のもとをそのままにしておくようなものですので、通達をどうしても、じゃ、やめられないというのだったらば、金銭的な、あるいは補助金の支出を伴うような行政は一切やめるように持っていかないと、そこのところでどんどん自治権まで奪われるような今現在状態になっていますから、ますますまずいことになると思います。
 かといって、先ほども話しましたけれども、これはグローバル化の流れの中で来ていますので、この流れというのはすぐに止めるというのはもう無理だと思います。それで、恐らく国会議員の先生たち束になって掛かっても、衆議院のあれでもそのとおりなので、のらりくらりと逃げられて全然実質は分からないでしょう。
 それで、一つの省庁に、建設省にも聞きましたけれども、みんな縦割りですから、その通達行政のすごい国としての実態をつかんでいるところはどこもないんですね。そこにばんばんお金が流れている。
 私は、先ほど申し上げませんでしたけれども、時間がなくて、ここで私のこの問題に対する提言を取りあえずまとめてきたので、五点ほどまとめてきたので、ちょっと聞いておいてください。いいですか、お答えに代える感じで。
 一つは、国が基本方針ですとか国の基本計画を作るというような場面がすごく多くなりました。ですから、日本の官僚は法の設計システムを完璧に変えているんですね。その法の設計システムのその新しさというのは何かみんなまだ分かっていないと思います、私も含めて。ですが、ここではっきり言えるのは、そこには国民の権利というのは一言も書いていないわけ。私は、九五年ぐらいから物すごく続いている、行政法がどんどん書き換えられましたけれども、その行政法の書換えに基づいて物すごくそういう疑問を持っているんですけれども、国の方針あるいは国の計画には必ず納税者あるいは国民の権利ということを明記してほしい、これが一つ。
 二つ目、このグローバル化で行く行く行政の民営化も私は避けられないと思います。もう今更騒いでも遅いんで、みんなでき上がっちゃっているわけですから、駄目なんですよ。それで、そこで行われる事業というのは、でもあくまでも公共事業であることには変わりありませんので、納税者は憲法による、憲法の基本的人権としての知る権利を、代わりに公共事業を行う企業に対して持っていますから、その知る権利に基づいて情報公開条例をちゃんと策定させなさいと。それをやってほしい、それを義務付けてほしい、説明責任も果たしてほしい、こういうことです。
 三番目に、事業計画とか実施計画、山ほど計画があります。もうどこに何がお金が使われてどうなっているのかは、あとは知らぬ顔なんですけれども、これは、さっきシャウプ勧告なんという話が出ましたけれども、欧米ではみんないろんな計画とか勧告に名前が付くんですよね、策定者の。日本もそれやりませんかという感じで、策定者の名前をきちっと作って、例えば野上計画とか、ああいうふうに、常に、責任者がもういなくなって、異動しても追えるようなシステムを作っておくことが必要じゃないかなと思います。
 四番目、今後は産官学でいろんな形の話し合いが行われると思います。先ほど述べました、神奈川県がIGESとか技術研究会と一緒にやっている会合、それは必ず住民に開かれたものにしてほしい。もういい加減にやぶの中でやるのはやめてほしいということを言っておきたいと思います。
 それから五番目には、先ほどちょろっと触れましたけれども、行政裁判所ないし憲法裁判所を作ってほしい。憲法裁判所があったらば今回のあの廃掃法の改正、地方自治法の改正、これは本当に違憲ですよ。何でこんなものが通ったのかというのは内閣行政局まで大分ぎゃんぎゃん言いましたけれども、お答えはないのでどうしようもないんです。そういう法律を、法治国家にしたいんだったら、やっぱり行政裁判所ないしは憲法裁判所は必須です。それがまだないというのは非常に恥ずかしい。
 以上です。
宮本岳志君 ありがとうございました。

 

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