<製品の規格は国民の安全が大前提>
宮本岳志君 日本共産党の宮本岳志です。
この法案は、通信端末・無線機器と電気製品についての基準・認証を日本とEUでお互いに受け入れるものであります。基準・認証制度とは、製品や施設設備が満たすべき基準とそれが満たされていることを確認する方法について定めるものだというふうに思うんですね。
本法案の衆議院での審議の中で、平沼経済産業大臣は、国民の生命、財産の保護は、言うまでもなく、基準・認証制度の果たすべき最も重要な目的と答弁されました。通信端末については、これまでの質問で取り上げてきた携帯電話の電波による健康リスクという問題もあります。総務大臣も経済産業大臣と同様に国民の生命、財産の保護はこの制度の最も重要な目的と、この認識で間違いございませんね、総務大臣。
国務大臣(片山虎之助君) 平沼大臣がそういう答弁されたようでありますが、基本的には同じでありますが、これらの制度によりまして、電気通信機器の利用に係る手続の簡素化だとか、電波の混線による電波利用秩序全体への障害の防止だとか、電気通信ネットワークの損傷の防止等が図られることによって、国民の生命、身体等の安全を確保する、こういうことでございますから、国民の生命、身体の安全確保というのはもちろん一番大切なあれですけれども、その前段階の目的も十分満たす、こういうことでございます。
特に、携帯電話の電波の人体に与える影響につきましては、これは研究会をつくりまして研究を行ってまいりましたし、そのための省令の整備を六月に行ったところでございまして、今後とも国民の生命、財産の保護についても基準・認証制度の重要な目的の一つであると認識していろいろやってまいりたいと思っております。
宮本岳志君 今回の二つの品目について、日本の基準に合致しているというEU内の機関の認証を日本が受け入れる、そのかわりにEUに製品を輸出しようとする日本のメーカーも国内でEUの基準に合致、適合しているという認証を受けられるようになる、そのこと自体は合理性のある方法だと私どもも思います。
しかし、基準・認証制度自体がいわゆる規制緩和の流れの中で政府認証から民間機関による第三者認証へ、さらには自己適合宣言方式へと緩められていく方向にあることは、国民の生命、財産の保護との関係で見過ごすことのできない問題をはらんでいるのではないかと思うんです。
そこで、重ねて金澤局長にも確認をしておきたいと思います。この法律による相互認証制度の運用もあくまで国民の生命、財産の保護という目的の達成を損なわないことを大前提として行われるというのは当然のことだと思うんですけれども、それでよろしいですね。
政府参考人(金澤薫君) 相互承認協定により欧州は、製品の技術基準及び適合性評価機関の指定基準について我が国の基準を用いることが義務づけられております。また、指定した適合性評価機関を引き続き監督するということも義務づけられているところでございます。このため、国内の適合性評価機関が適合性を実施する場合と同等の安全性がまず確保されていると私ども考えているところでございます。
また、本協定上、欧州の適合性評価機関の能力などに問題が生じた場合でございますけれども、欧州及び合同委員会に異議申し立てを行うことによりまして、その機関の適合性評価結果の受け入れを停止することができるということがございます。また、合同委員会が合同検証の実施を決定した場合、当該適合性評価機関の同意を得て、その適合性評価機関が我が国の指定基準を満たしているかどうかという点について合同検証という手もございます。また、健康または安全の保護のために必要なセーフガード、これは協定の十条でございますが、とることも認められていると。
いろんな措置が講じられるわけでございまして、相互承認制度によりまして国民の生命、財産の保護という目的の達成に支障を及ぼすものではないというふうに私ども考えておりますけれども、先生のおっしゃいますように、国民の健康、生命、身体、財産の保護というものは当然重要な目的というふうに考えているところでございます。
宮本岳志君 この三月三十日に閣議決定された規制改革推進三カ年計画でも、「基準認証等の制定・運用に当たっては、国民の生命、身体、財産の保護などそれぞれの制度が本来目的としている様々な政策目的の達成に支障が生じないことを前提として、」と、こういう文言があります。くれぐれもこの基本的な立場を忘れないで政策の遂行に当たっていただきたい。
<遅れている医療機器の安全基準>
宮本岳志君 さて、この法案は名前のとおり日本・EU間で既に結ばれている協定の実施のために提出されております。この協定の締結に当たっての交渉の当初では医療機器もその対象として検討されてきたと聞きました。今回、医療機器はこの協定の対象に含まれてはいないんですけれども、医療機器といえば携帯電話の電波のペースメーカーへの影響ということが社会問題となっておりまして、繰り返し国会へも請願が提出されているということがございます。
ここに総務省の基盤局からもらった「電磁波が医療機器に与える影響について」という資料があります。これによりますと、医療機器の妨害波排除能力、イミュニティーというものについての国際規格がつくられていて、要するに今後製造される医療機器は携帯電話の電波などでは誤作動を起こさないようなものでなくてはならないとされております。この資料には、「欧州における規格」として、「医療機器指令に基づき医療機器はイミュニティを持つこととされている。」と書かれてありますけれども、この医療機器指令というのはEU域内で法律としての強制力を持つかどうか、外務省にお答えいただけますか。
政府参考人(田中均君) お尋ねの点でございますけれども、いわゆる医療機器指令につきましては、欧州共同体の域内で法的拘束力を持つものというふうに承知しております。
宮本岳志君 同じ資料には、「我が国の規格」として、「医療機器のイミュニティに関するガイドライン」ということが書かれてあります。「現在、日本工業規格(JIS)の策定を準備中」とございます。
そこで、厚生労働省にお伺いしたい。このガイドラインや日本工業規格、JISは法的な拘束力を持ちますか。
政府参考人(鶴田康則君) 日本医療機器関係団体協議会が作成いたしました医用電気機器のEMC適合化基準、ガイドラインは業界団体が自主的に遵守する基準でございまして、法的な強制力を持つものではございません。
また、工業標準化法に基づき、社団法人の電子情報技術産業協会が作成いたしました日本工業規格の、先生おっしゃられました原案につきましては、現在、日本工業規格として適当か否か鋭意検討を行っているところでございます。日本工業規格は法的な強制力を持ちませんが、本規格の内容を薬事法体系の中で活用することが可能か否かを検討してまいりたいと思っております。
宮本岳志君 EUでは法的な拘束力を持たせてきちんとやっておるんです。日本では業界の自主的なガイドラインに任せている。今度はJIS規格にしようということですけれども、JISというのも別に強制的なものではございません。肝心なところではこうしてやはりEUと比べてもおくれているということを指摘しておきたいと思うんです。
次に、携帯電話から発生する電波の影響について、これはペースメーカーだけでなくて、人体直接の影響という問題があります。これについては「携帯電話の電波防護基準について」という、これも基盤局の資料をいただきました。その冒頭には、「我が国において携帯電話に適用する電波防護基準は、以下に示すとおりEUの基準と同じであり、双方ともに強制規格化されることとなっている。強制規格化されれば相互承認協定(MRA)の対象となる予定。」と。EUと同じということが妙に誇らしげに書かれてあるわけです。ともかく、相互承認協定の対象ということですから、電磁波の直接人体への影響という問題は医療機器とは違って本法律案の射程の範囲に入る問題であります。
この資料の1の(3)には、「電波防護基準の遵守を義務付けるため、関係省令を改正(平成十三年六月一日公布、平成十四年六月一日施行予定)。」と、さっき大臣がお触れになった省令の改正がありますと書いてあります。つまり、我が国では来年の六月まで待たないと法的な拘束力、強制力を持った規制はかからないということになると思うんですが、通信基盤局長、そうですね。
政府参考人(金澤薫君) 総務省では電波防護基準の遵守を義務づけるため、携帯電話端末に対して電波が人体へ吸収される量、いわゆるSARと言っていますが、の許容値を規定するための関係省令を改正し、来年六月より施行する予定でございまして、先生のおっしゃるとおりでございます。この結果、これ以降は電波防護基準は電波法に定める技術基準の一つとして法的な拘束力を持つこととなります。
改正省令では、測定者の技能習得期間及び携帯電話の端末製造者の基準への対応措置期間、これを確保する必要があるということ、それから、国民への周知啓発により制度の円滑かつ着実な導入を図るために公布より一年間の経過措置を置いているということでございます。
法的な強制力を持った規制は……
宮本岳志君 もういいです。つまり、来年六月なんですよ、強制力を持つのは。
同じ資料の2、「EUの電波防護基準」のところを読むと、「RアンドTTE指令において、健康と安全性に関する規定に基づき強制化されているが、」云々とあります。このRアンドTTE指令がEUで出されたのはいつか、そしてこの指令によって何年何月をもってこれは強制化されたのか、これも外務省経済局、お答えいただけますか。
政府参考人(田中均君) 御質問のRアンドTTE指令でございますけれども、作成されましたのは一九九九年の三月九日でございまして、一九九九年の四月から発効をいたしました。
この指令は、その後EU加盟各国における実施法令の整備を得まして、二〇〇〇年四月より適用が開始されております。したがって、この指令に盛り込まれたさまざまな技術上の基準というのは同じく二〇〇〇年四月から強制力のあるものとして適用されていると承知しております。
宮本岳志君 外務省、ありがとうございました。これで結構です。
EUと同じと言うけれども、EUは既に一年以上前に強制化しているわけです。我が国は、先ほどの答弁でもあったように、来年六月から初めて強制化される。二年以上もおくれるということになるんですね。
私は、昨年五月二十九日、参議院交通・情報通信委員会の質問で、この問題について、「結局、日本の携帯電話を外国で売るためには国際的な基準をクリアしておかなければならない。」、そちらに力点が置かれて、健康のためではなく業界の利益のために国際基準を研究しているのではないかと指摘をいたしましたけれども、改めてこのことが問われているのではないかと思うんです。大臣も局長も、国民の生命、財産の保護が大前提だと最初に約束をしていただきましたものですから、そういう決意でぜひ取り組んでいただきたいというふうに思います。
<TV番組に聴覚障害者向け字幕を>
宮本岳志君 次に、これまで何度も取り上げてきた問題ですけれども、視聴覚障害者向け字幕放送の拡充の取り組みについてお伺いいたします。
今、審議されている法案についてもグローバルスタンダードということが言われておりますけれども、一昨日の審議でも指摘をしたように、政府は都合のいいときだけ国際基準を持ち出すんですけれども、本当に自分たちのやっていることが国際的な基準に照らしても恥ずかしくないものかどうか、これは真剣に検討しておられるのかと私思うんですね。
障害者への情報保障ということについて言いますと、国際的な趨勢はバリアフリーから今やユニバーサルデザインへと進みつつあります。つまり、視聴覚に障害のある方々にもテレビを楽しんでもらうために何か特別な対策をするという考え方ではなくて、障害があってもなくても楽しめるテレビというのが結局は健常者にとってもいいテレビなんだと、こういう考え方ですね。
そこで、議論の前提として現状を大まかに確認しておきたいと思うんです。総務省のこれは統括官になりますか、総務省の基準でいうところの字幕付与可能番組とは何か、現在放送されている地上波のテレビ番組のうち字幕付与可能番組は総放送時間のおよそ何割になっているか、字幕付与可能番組に対するNHK及び民放の字幕付与率の実績、字幕付与可能とされていないにもかかわらず字幕付与がされている番組がNHKにあるかどうか、端的にお答えいただけますか。
政府参考人(高原耕三君) まず字幕付与可能番組の定義でございますが、一点目として、技術的に字幕を付与することができない放送番組、例えばニュースとかスポーツ中継とか生番組が一点目。二点目として、オープンキャプション、手話等による音声を説明している放送番組、字幕つき映画、手話ニュース等でございます。三点目として、外国語の番組。それから四点目として、大部分が歌唱、器楽、演奏等の音楽番組。五点目として、権利処理上の理由等により字幕を付すことができない放送番組、こういうものを除くすべての放送番組が字幕付与可能な放送番組というふうに定義をいたしております。
それから、二点目のお尋ねの字幕付与可能番組の総時間の割合でございますが、約四割というふうに認識をいたしております。
それから、三点目のお尋ねの実績でございますが、平成十二年七月に一週間について行った実態調査によりますと、NHKは六〇・九%、民放キー五局は九・〇%となっております。
それで、四点目のお尋ねの現在NHKで行われている例でございますが、平成十二年三月二十七日から「ニュース7」でリアルタイム字幕放送を試行的に行っておるというふうに認識をいたしております。
以上です。
宮本岳志君 小坂副大臣が七日に答弁されたのは、この「ニュース7」でNHKが試行的に行っているような取り組みのことだと思います。そこまで今すぐに義務化というのは確かに時期尚早だと。しかし、総務省が今二〇〇七年までに字幕をつけると言っているのは、そういう技術的な問題がある番組はすべて除いた残りの四割、いわゆる字幕付与可能番組についてつけると言っているんです。
そこで、小坂副大臣に聞くんですけれども、総務省の基準でいう字幕付与可能番組というのは、現在の技術で字幕を付与することが可能なのか不可能なのか、お答えいただけますか。
副大臣(小坂憲次君) 今、可能な番組というのは高原政策統括官が申し上げたとおりでございます。それ以外のものができるのか、また現状はどうなのかということでありますが、その技術的な問題だけではなく、時間的な問題も含めたすべてのものをおっしゃっているんだろうと。宮本委員も全部……
宮本岳志君 いや、技術的な問題です。
副大臣(小坂憲次君) 技術的な問題ですか。技術的な問題で、前回答弁申し上げたように、自動的につけられるとかそういう問題の中には、日本語独特の困難性というものも入っているという御答弁を申し上げたと思います。
そういう中で、宮本委員と同じように障害者の皆さんに楽しんでいただける番組はみんなが楽しめる番組だというふうに私も思っていますので、そういう意味で基本的に義務化できるならば義務化していきたいという気持ちは持っているということはこの前申し上げたとおりでありまして、その姿勢は御理解いただいておいて……
宮本岳志君 可能かどうかはどうですか。
副大臣(小坂憲次君) 技術的に可能かどうか、それは経済的な問題とかいろんな問題を含めた上で、単に技術的なものだけを言えば恐らく可能であろうというふうに思います。
宮本岳志君 小坂副大臣は七日の答弁でこう言ったんですよ。「障害者のために考えている立場を譲っているように誤解されるといけませんので、一言申し上げておきますと、義務化というのは、技術的に可能となった時点で私は義務化をしていくことは必要だと思います。」と述べたんですよ。今、答弁で技術的に可能だと答弁されたんですから、そうしたらこの義務化に向かって今すぐ努力すべきだという結論になるんじゃないですか。いかがですか。
副大臣(小坂憲次君) 私はこの前も申し上げたことと変わっておりませんで、その努力は常にしているというふうに認識をしていただきたいと思うんですね。しかしながら、義務化というのを法律で決めてしまいますと、そこに今度その義務化ができない何らかの事情があった場合に、ここに違法性が出てくるということなんですね。そういうことを踏まえながら、現実と、そして我々が考えている、障害者に対する健常者と同じような環境づくりという問題等折り合っていかなきゃいけない。そういう点で、今、時期尚早であるという部分もありますというふうに申し上げているわけであります。
また、義務化と、義務化したものとその例外を設ければいい、できる範囲内で規定するということを私は言っているんだというふうに宮本委員たびたびおっしゃいますが、そうした場合、それじゃ義務化しているものと義務化していないものの内容をだれが判断してどういうふうに分けていくか。これは非常に難しい境界領域が出てくるわけですね。
そういう点で、私は民放にもNHKにもみずから努力するということをお願いし、また彼らもそういった意味で努力するという姿勢を持ってやっていただくように私どもこれからもお願いをしてまいりますし、そういう意味で私どもの努力は今も続けておりますし、これからもやってまいりたい、このように考えているところで、決して後ろ向きではなく前向きに、宮本委員と同じような気持ちで私どもも努力しているというふうに御理解をいただきたいと思っております。
宮本岳志君 あなたは七日に、障害者のためのバリアフリーの環境をつくっていくことにおいて委員に負けることは絶対にないとまで答弁をされたんですよ。今の答弁を聞いていると、負けることは絶対にないどころか勝負にならないじゃありませんか。やっぱりこれはまじめに取り組む必要がある。
九七年に現在の放送法の努力義務の規定ができたんです。それは、超党派の議員の努力と関係各団体の運動が結実して法改正にこぎつけた。しかしその後の状況を見ると、我が党が入れかわり立ちかわり質問しておりますけれども、NHKは着実に努力しているけれども、民放の方は遅々として進まない。全体としては欧米諸国の水準から大きく立ちおくれたままなんですね。この状態を打開するためには、もう一度立法府のイニシアチブが求められていると思います。聞くところによると、民主党さんもこの問題での法案準備を進めておられるというふうに聞きました。私は歓迎したい。各党の協議を進めて、本委員会で多数の一致ができる点をぜひ見出して、我々もなし得ることがあればともに努力をしていきたいというふうに思っております。
<選挙での情報保障は参政権の問題>
宮本岳志君 そこで、少し情報保障の問題で具体論に移りたいと思うんです。
最近、党首討論への関心が急に高まったということで、NHKだけでなく民放もこれを中継するようになりました。民放では字幕スーパーで議論の要点を画面に入れているのもあると聞いたんですけれども、私の地元には、ぜひ党首討論に字幕や手話をつけてほしいという有権者の声も届いております。
前提の認識を大臣に聞くんですけれども、国会審議の中継や選挙の政見放送など、これをすべての国民や有権者に届けることは、これらの方々の参政権に直結する問題であり、民主主義の基礎として重要だと私は思うんですけれども、これはもう意見は一致していただけますね。
国務大臣(片山虎之助君) 今、放送メディアというものの影響力等を考えますと、言われるように、国会の中継や党首討論等をできるだけ国民の皆さんに見ていただくということは必要でしょうね。だから、そのための努力はすべきです。
宮本岳志君 小泉内閣のメールマガジンは登録二百万人を突破したと聞きましたけれども、情報を求めてくる人にだけ情報提供するのがディスクロージャーでないはずです。情報弱者にもきちんと情報保障することこそ政治の務めだと思うんですね。党首討論や予算委員会での総括質疑などについては、政府の責任なり国会の責任で要約の文字情報を提供するなり、最低限手話通訳を付与することなど、急いで検討すべきだと思うんですけれども、これは国会、政府という問題ですから、ひとつ大臣に、これは検討の必要をお感じになりませんか、大臣。
国務大臣(片山虎之助君) 望ましいんですが、技術的な問題その他どういう問題があるかをまず研究して、どうクリアしていくかということが必要でしょうね。御趣旨はよく私もわかりますので、いろんな検討は幅広くやっていきたいと思います。
宮本岳志君 全日本難聴者・中途失聴者団体連合会から私どもに、選挙における情報保障の要望書というのを受け取っております。その要望の第一項目めには、「政見放送に字幕を付けていただきたい」とあるんです。衆議院選挙ではビデオ持ち込み方式なので、政党の側で文字をつけることもできるんですね。しかし、参議院選挙の政見放送はスタジオ撮りになるので、手話通訳者を一緒に立たせても、高齢になってからの失聴者や難聴者には手話のわからない方が多いんです。
そこで、これは総務省の選挙部長に聞くんですが、スタジオ撮りの政見放送に放送局の責任で字幕をつけていただくなり、あるいは全部ビデオ持ち込み方式にして、候補者の責任で参議院選挙でも字幕をつける、こういうふうに改善すべきかと思うんですが、いかがでしょうか。
政府参考人(大竹邦実君) まず、政見放送でございますけれども、この政見放送につきましては、早いところでは公示日の翌日から放送が行われている状況でございます。したがいまして、政見放送の収録は公示日前後の極めて短い期間で行われているわけでございまして、この間に字幕を制作することは非常に難しいというふうに聞いております。それからまた、政見放送につきましてはNHKに限らず多くの一般放送事業者でも行っているわけでございますけれども、字幕を自主制作番組に付与しておりますローカル局が非常に少ないというふうに承知しております。したがいまして、現時点におきましては、政見放送に字幕を付することにつきましては多くの解決すべき課題があるものと考えております。
それから次に、持ち込みビデオ方式でございますけれども、これにつきましては、政策本位、政党本位の選挙制度のもので、一定の要件を満たす候補者届け出政党ができるだけ自由に政策を訴えることができるようにというふうな観点から、平成六年の法改正により設けられてございますけれども、これにつきましては、衆議院の小選挙区選挙の候補者届け出政党に限り認めるということにされたわけでございます。この時点におきましてはいろいろ議論が行われたわけでございますけれども、その際には、政見放送の品位保持規定との関係もございまして、これらの政党に限ることとされたものというふうに承知してございます。
宮本岳志君 もう一つこの要望書に書かれていることを見ますと、街頭演説などで候補者の言っていることを文字で聴覚障害者に伝えようとすると、公職選挙法の壁にぶつかるということです。「候補者の声をパソコン要約筆記者が文字通訳すると公職選挙法で「電光ニュース」に該当するとされ、できません。人混みの中で紙に筆記して伝えようとしても「文書」にあたるとされ、できません。屋内の集会で、候補者の政見をOHPで要約筆記を行うと「幻灯機」に該当するとされてできません。」と書かれてあります。
このような状態を解決する必要があると私思うんですけれども、これについてはいかがでしょうか。
政府参考人(大竹邦実君) 公職選挙法におきましては、選挙運動用文書図画は、法に定められた一定のものに限り頒布または掲示することが認められているわけでございます。これ以外につきましては、頒布または掲示することができないとされているところでございます。この場合におきまして文書図画とは、紙によりますもののほか、パソコンのディスプレーに表示される画面でございますとか、あるいはただいま御指摘ございましたOHPにおける映写画面なども含むと解されるところでございます。このことから、御指摘のように、演説内容を筆記したものを頒布いたしましたりあるいはOHP等によって掲示しますことは、公職選挙法に禁止される文書図画の頒布または掲示に当たるというふうになるわけでございます。
障害者の方々が選挙に参画しやすいものになりますようにその便宜を図りますことは、非常に重要な問題と私どもも認識してございます。御指摘のような個別の事例におきましては、いろいろと聴覚障害者にとりまして不都合な点が生じていることも十分承知しているわけでございます。いずれにいたしましても、私ども、今後、障害者の方が投票しやすい環境をつくることができますように幅広い観点から検討を進めてまいりたいと考えております。
宮本岳志君 情報をつけてくれ、字幕をつけてくれと要求してそれはなかなか技術的に難しいと、じゃ自分たちで情報をつけようとすると公職選挙法違反でだめと、ここにやっぱり非常にやりきれないものを感じておられるんですね。
この要望書の最後に書かれてあるのは、「総務省内に政見放送研究会を再度設けていただきたい」と書いてあるんです。以前、自治省内にあった政見放送研究会が九四年に行った答申で、今のように政見放送の手話通訳が制度化されました。そのときに、手話でなく字幕をつけるということについては、技術的に不可能だから今後の検討課題ということになって今日に至っております。
衛星放送に続いて地上波のデジタルのスケジュールも具体的になりました。技術的な条件が当時と明確に変わってきているんですから、改めて検討すべき時期に来ていると私は思います。先ほどから局長とのやりとりを聞いていただいて、これも公職選挙法を所管する大臣として、大臣の方からひとつどうお考えか、ぜひお聞かせいただきたいと思います。
国務大臣(片山虎之助君) 私はかねがね、今IT時代で、しかも世界で一番進んだITの先進国にすると、二〇〇五年までに、こう言っていますから、今のインターネットやホームページやそういうものの利用もいかがかなということをこの委員会等でも申し上げてまいりましたので、そういう中に含めまして今の問題も、限定的な文書図画というのもいかがかなと本当に思っておりますので、いずれにせよ研究は始めさせていただきます。
<ユニバーサルデザインの思想を>
宮本岳志君 きょうは、法案の直接の中身に限定せずに、通信機器について、またいわゆる情報バリアフリーの問題について幾つかのことをお聞きしました。
最後に、一つ皆さんに紹介しておきたい話があるんです。
テレビのリモコンというものを最初につくったのは大分県別府市の福祉施設だったんです。そこで重度障害者の人のためのモデルハウスをつくったときに、テレビのところまで行ってチャンネルを変えることができないので、遠隔操作用のスイッチというものを考えた。それが今日では、リモコンのついていないテレビの方が珍しいぐらいにまで普及したんです。これはユニバーサルデザインということの意味を非常によくあらわしております。障害者に優しいということはすべての人に優しいということなんです。
政府はすぐに世界最先端と言いますけれども、企業の技術力だけに目が行くのではだめだと思うんです。国民に何が必要か、国民がひとしく恩恵を享受するにはどうすればいいかを考えることが大切だし、そうしてこそ実は企業の活動も伸びるということを指摘して、私の質問を終わりたいと思います。
ありがとうございました。