(参考人への質問)
宮本岳志君 日本共産党の宮本岳志でございます。
本日は御出席をいただきましてまことにありがとうございます。
早速質問をさせていただきます。
我が党は、既に一九九三年の十月二十六日に参議院の運輸委員会において、当時の高崎裕子議員がこういう交通施設バリアフリー化のための法制化を要求いたしました。それ以来一貫して求めてまいりましたけれども、政府が今回いわゆるこのバリアフリー法を提出されたことを一歩前進だと、こう受けとめております。同時に、この法案をより一層よいものにしていきたいと、私どもも衆議院に続き参議院でも修正案の提案を予定しているところでございます。
<すべての人の権利として保障を>
宮本岳志君 まず、そこでお伺いしたいんですけれども、法案の根本にかかわることとして、高齢者、障害者等すべての人の移動の自由をやはり権利として保障することが大切ではないかと思います。そして、障害者というふうに言った場合に、身体障害者だけでなく精神障害者あるいは知的障害者も当然含むものにすべきではないかと、そう思うわけです。その点で、この法案がまだ弱いのではなかろうかと考えておりますが、まず野村参考人にお伺いをしたい。
野村参考人は、先ほど、基本的人権であるということもお述べになりました。また、移動は生活の原点であるということもお触れになりましたし、あるいは障害者基本法第二十二条にもお触れになっておられます。この移動の権利を基本的人権と位置づけるという点、また、知的、精神的障害者も含めるべきという点、いかがお考えでしょうか。
参考人(野村歡君) 御発言の趣旨は全く賛成でございます。
ただし、技術的にこれを法案にどのように入れるかという、その具体的な記述がどこまでできるかという面で、私はまだ、私どもの責任ですが、研究が十分でないというふうに思っております。
先ほど白石参考人から、例えばわかりやすい空間というのもございます。今のあちこちにできているターミナルビルといいますか、これはなかなか高齢者の人には規模が大きくなり過ぎたものでわかりにくいという点がございます。そういう意味で、わかりやすさ。
それから、私どもが通常言っているのは、知的障害者の皆さんでも、例えば駅名を平仮名だったら読めるよと、それで実際に京浜急行のある駅では平仮名で表示をしているという事例もございます。
ということで、できることからやっていくということは非常に重要なことですが、ただ、これを制度的にまとめるまでにちょっと申しわけないけれども私どもの研究が不十分であるということを反省したいと思います。
趣旨はよくわかりました。
宮本岳志君 もちろん検討の必要なものというのはたくさんあると思うんですね。しかし、今日のおくれということを考えたときに、私たちは高らかに宣言をするといいますか、そういうことも含めて、やっぱり基本的にはすべて権利として保障していくという考えが非常に大事ではなかろうかと考えるわけです。
先ほど秋山参考人もモビリティーのおくれということに触れられて、これはアメリカとの違いがやっぱり人権ということにあろうかという御指摘がございました。それで、もちろんそれを取り戻し、進めていく上で、やはりこの人権という考えをはっきりさせることが大切ではなかろうかと思うんですが、この点、秋山参考人、いかがでしょうか。
参考人(秋山哲男君) カナダとアメリカを対比して見たときに、カナダは八〇年前後ぐらいに人権法をつくっているんですね。逆にこういった交通バリアフリー法みたいな、ADAみたいのをつくろうとしたんですが、オンタリオ州でつくろうとしたんですが、それはやめたと。というのは、住民ともっとネゴシエーションをしてその中でやっていくのがカナダの姿勢だということで、人権法をベースとして人権の権利としてはちゃんと位置づけているんですが、交通についてはそういう形では展開しなかった。
だから、バリアフリー法の中に人権法的な意味を入れるのがいいのか、別のところでちゃんと人権法を入れるのがいいのか、どっちがいいか私は今はわかりません。そういう意味では、なぜカナダのオンタリオ州ではやめたのかという原因を探りたいんですが、残念ながらちょっと行くチャンスがなくて今のところペンディングにしています。そういったところが私の現在の感想です。
宮本岳志君 次に、我が党は、個々の障害者にとって移動ができるかできないかというのは時には命にかかわる重大問題であり、新設や既設の区別や乗降客数の多少にかかわらず、すべての施設を対象にすべきではないかと考えています。だからといって、もちろん全部を一度にやれないわけで、優先順序をつけて取り組むのは当然です。しかし、優先順序をつけて取り組むにしても、最終的には区別なくすべてをやる、これが基本だと思うんです。
この点について、野村参考人は、災害発生時の高齢者や障害者の避難誘導等の救援体制などにも問題意識をお持ちのようですし、基本的人権というふうにも先ほどお述べになりました。この点、区別なくすべてやって当然という考えについて、どういう御意見かということをお聞かせいただきたいと思います。
参考人(野村歡君) 生活環境の整備のゴールとしては、まさしくおっしゃられたとおりだというふうに私は認識しております。
ただ、そこに行くまでの過程として、通常の状況で交通機関が運行されている、このときに余り問題はないんだけれども、非日常、すなわちアンユージュアルと私ども言っておりますが、例えばふだん三番線に着く電車が今度は隣のホームの五番線に出た、こういうときの情報キャッチというものは実は障害者の方は大変困っておられるんですね。そんなことも含めて、私どもは非日常時の問題をもっと意識をしたいというふうに思っております。
宮本岳志君 白石参考人も、先ほどの意見陳述の中で、一度には無理でも事業者の計画をぜひ自主的に持って進めてほしいというふうにお触れになりましたけれども、御意見はいかがでしょうか。
参考人(白石真澄君) 既設の駅をレベルにかかわらずすべてバリアフリー化というのは、財政上の問題から現時点では非常に難しい問題があるというふうに思います。しかし、各事業者の方が、どこにどういう問題があるのか、それは人的介助で賄えないものか、補うことができないのか、ここは使えないという情報提供をすることによって新設の駅に回っていくことはできないだろうかと、例えばハードでできない部分をほかの手段で実現していく方法もあると思います。
そういった意味でも、ぜひ既設の駅の点検をし、中長期的な、今は無理であっても例えば十年後にここを改造したいという目標をつくっていただけるよう努力をお願いしたいと思います。
<当事者の意見をどのように反映するのか>
宮本岳志君 整備を進めていく上で、当事者の参加と意見の反映というのはかぎを握る問題だと思います。
白石参考人は、「すべての人にやさしい交通をめざして」と題する対談で阪急伊丹駅を取り上げておられますし、さまざまなユーザー側の視点について触れておられます。また、本日の御意見でもこの点お触れになったように思います。
また、秋山参考人はイギリスの例、二分の一の障害者委員の参加を規定したDPTACについて触れられました。
この当事者参加という点、白石参考人、それから秋山参考人、いかがでしょうか。
参考人(秋山哲男君) やはりイギリスでは当事者参加を経過して十五年たっているわけですけれども、その間にさまざまなレポートが積み重なってきました。その結果としてイギリスの法律、制度がつくられてきたという経緯もございますし、当事者参加というのは、例えば行政マンが計画したところをもう少しきめ細かく一つの方向性を導くものだろうというふうに私は理解しています。したがって、当事者参加については、可能な限りというよりは、むしろ今後は重要な事項ですのでぜひやるべきだろうというふうに考えています。
以上でございます。
参考人(白石真澄君) 私も、秋山先生がおっしゃいましたように当事者参加というのはぜひとも必要であると思います。しかし、いろいろ市町村で今行われている取り組みを拝見しますと、当事者の個別性が余りにも強く、意見がぶつかり合うことも多い、そういったところを調整できるようなコーディネーターの存在が必要ではないかなと思います。
以上です。
宮本岳志君 済みません、じゃ野村参考人もあわせて、恐れ入ります。
参考人(野村歡君) 私は、当事者参加はもういわば当たり前ということで発言をいたしませんでした。
東京都の福祉のまちづくり推進協議会でもその話が出ておりますが、これはもう文書の中に実は明文化をされております。私は、できる限りというよりかは、大きな建築物をやるときにはもう事前にこういうものをやっていく、ある程度進んでから意見を聞きましょうという話はよくあるんですが、実はベースのベースのところでこういう話をやっぱりやるべきではないかというふうに思っております。
宮本岳志君 次に、スペシャル・トランスポート・サービスについてお伺いします。
交通機関や施設のバリアフリー化が進んでも、そこまでどのようにして行くのかということが問題だと思います。我が党はこのSTSについても早急な法制化を行うべきだと提案をさせていただいておるわけですけれども、まず秋山参考人は、「高齢者・障害者交通の新しい潮流」という論文でこの点に触れられて、特にこれがおくれているというふうにおっしゃっておりますし、本日もその点について触れられました。
まず、このSTSの保障という点で、先ほど来の質問ともダブるかと思いますけれども、どうぞ御意見をお聞かせいただきたいと思います。
参考人(秋山哲男君) その前に、先ほどの障害者の参加についてちょっと補足が一つあります。
いろいろの建築物あるいは駅舎、道路を改善していくときに、障害者の参加ということも大切ですけれども、もう少し大事な点は、障害者の意見や行政の意見をきちっと見渡せる、イギリスでは都市計画などにインスペクターという制度があるんですが、そういった人を育てることが一点、それから二つ目は、アクセスに対しての専門家が欠如していますので、アクセスアドバイザーの専門家を育てる、こういったことが決定的に欠けている。
ですから、障害を持つ人の参加をさらに補強するためにはこういう二つぐらいのタイプの人が日本の中に相当いないと、実質的にずさんな計画とかずさんな実施があちこちでできてくるんじゃないかというふうに思います。
それで、STSの保障ですけれども、先ほどお答えしたことばかりなんですが、やはり一般的なバスやタクシーというのがございまして、バスは特に徐々にスペシャル・トランスポートの方に近づいていっていますし、それからタクシーは逆にバスの方に近づいてきているし、かつスペシャル・トランスポート型に行っています。
選択としては、ロンドン型のユニバーサルデザイン型のスロープつきタクシーというのも一つの案でありますし、それに、ロンドンではそういうものも運行していますし、運輸省のダイヤル・ア・ライドという運輸省バージョンのドア・ツー・ドア・サービスも運行しています。タクシーに乗るについてはそれの補助制度もちゃんとしています。そして、かつボランティアでやっているコミュニティートランスポートも存在し、それから病院の送迎にはアンビュランスも存在し、多面的にやっている。イギリスのロンドンの例だけでもそうですね。
こういったところを日本で多面的にやるためにはどうしたらいいかということで、十月の二十日前後ぐらいにイギリスのアンビュランスサービスとコミュニティートランスポートの人を呼んで土木学会あるいは日本財団主催でセミナーを開いて、ぜひ厚生省の方々、あるいはさまざまな行政の方々に勉強していただきたいというふうに思っております。
宮本岳志君 野村参考人にも御意見を。
参考人(野村歡君) 大変恐縮ですが、私がこういう研究を始めたころ、もう三十五年ぐらい前になりますが、交通問題それから建築問題、雇用の問題、あらゆる方面で研究をしてまいりましたが、その後に秋山さんという大変優秀な方が出てまいりましたので、私はこのスペシャル・トランスポーテーション・システムはもう秋山さんにお任せをするという姿勢をとっております。
大変恐縮ですが、答弁を控えさせていただきたいと思います。そんなに深く勉強をこの分野はしていないということでございます。恐縮でございます。
宮本岳志君 もう時間がないんですが、先ほど秋山参考人の御指摘で、都市はいいが、今回の法のスキームで地方については無力であるという御指摘もございました、私、非常に考えさせられたんですけれども。ですから、私どもはぜひこの法律をつくっていく上で地方の御意見をお伺いすべきではないかというふうにも考えております。
その点、少し先ほどの陳述との関係で、地方に光が当たらないのではないかという御懸念についてお聞かせいただいて、質問を終わります。
参考人(秋山哲男君) バリアフリー法のかなりの目的が多分都市の交通機関を中心としていますので、地方の交通については、バスを含む、スペシャル・トランスポートを含む、あるいは自動車を含む新しい考え方を提案しないといけないだろう。
というのは、規制緩和がバスがこれから起こりますので、バスをどういうふうに使っていくか、あるいは住民参加で地方の人がどれだけ自分たちがお金を負担していくか、このあたりをかなりひもといていかないと難しい領域になりますので、簡単に法律でアプローチすることはなかなか難しいだろうと。一定程度の実践を経た上で何らかの制度的な保障というのは必要だろうと思いますが、そのあたりが今回地方は光が当たらなかったというふうに考えております。