宮本岳志君 総理が大変なときですからしっかり行政をチェックしてまいりたいというふうに思っております。
今回の法改正で有害液体物質の流出に備えた緊急のマニュアルを船に常備させると、これはむしろ当然のことだと思います。問題は、万が一の事態において適切な対応をするための平常からの備えが事業者の側、行政の側でしっかりとできているのかどうかという点だと思うんです。
そこでまずお伺いしますけれども、本法案の対象となるケミカルタンカーで実際に運ばれている液体物質にどのようなものがあるか、上位十品目まで答えてください。政府参考人(谷野龍一郎君) お答え申し上げます。
上位十品目ということでございますので、順番にケミカルタンカーで運ばれております液体物質について述べさせていただきます。
第一位がキシレンでございます。第二位がベンゼン、第三位がスチレン、第四位がメタノール、第五位がトルエン、第六位がシクロヘキサノン、第七位がアクリロニトリル、第八位がコールタール、第九位が1・2ジクロロエタン、第十位がクレオソートでございます。
これらは全国内航タンカー海運組合の調べに基づく数字でございまして、総量で千六百七十万トン、上位十品目のトータルがその約半分に当たる八百五十九万トンでございます。宮本岳志君 それらの化学物質の性質に応じた事故処理体制はどのようになっているか、端的にお答えください、海上保安庁。政府参考人(長光正純君) お答え申し上げます。
海上保安庁では、こういった化学物質を積載しております船舶からの流出事故が発生しました場合には、海上災害防止センターが取りまとめておりますが、各種有害液体物質の特性及び防除手法等を取りまとめました有害液体物質データシートがございますが、これに基づきまして防除処理に当たっております。宮本岳志君 ケミカルタンカーの積み荷の大半というのは、運輸省のおっしゃる白物、つまり揮発性の高い石油類だと思っておりました。ところが、よく調べてみますと、先ほどお話がありましたように輸送実績の七位、八位のあたりから少し様子の違う物質が出てまいります。
第九位の1・2ジクロロエタンは有機塩素化合物ですけれども、今答弁されたデータシートではどのような処理方法になっておりますか。政府参考人(長光正純君) ジクロロエタンにつきましては、流出した場合には危険区域をまず設定いたしまして、自然拡散させることを基本に処理を行うこととなっております。宮本岳志君 環境庁にお伺いをいたします。
大気中及び海水中の1・2ジクロロエタンの環境基準について、どういう取り扱いになっておりますか。政府参考人(廣瀬省君) お答えいたします。
ジクロロエタンのうち1・2ジクロロエタンは、国際がん研究機関によって発がんの可能性があるとされるなど、人への健康影響が懸念されている物質でございます。
環境庁においては、水質について1・2ジクロロエタンの環境基準を〇・〇〇四ミリグラム・パー・リッター以下と設定しております。また、大気については、有害大気汚染物質に該当する可能性がある二百三十四物質のうち二十二の健康リスクがある程度高いと考えられる優先取り組み物質の一つとしており、環境基準の設定も視野に入れて科学的知見の充実を図っているところでございます。宮本岳志君 まだ基準はできておらないということだと思うんですが、少なくとも健康へのリスクが高いという認識は持っておられるわけであります。
何か参考になるものはないかと探してみましたら、地下水の環境基準、この中に1・2ジクロロエタンというものがございます。この基準を見ますと一リットル当たり〇・〇〇四ミリグラム以下、この基準は鉛や六価クロムよりも厳しく、水銀やPCBよりは緩やかという水準の基準になっております。
有機塩素類というのは、単純な石油類と違って、海産物の食物連鎖の中で濃縮されるという危険がある。まさにダイオキシン、ジベンゾパラジオキシンというのも有機塩素系の化合物ですけれども、それを海に沈めて事足れりという対処でいいのかどうか、これは真剣な検討が必要だと思うんですが、いかがでしょうか。政府参考人(長光正純君) このジクロロエタンにつきましては、三日程度で拡散溶解していくという性状を持っておりまして、基本的にはその間に当該危険区域に立ち入らないという措置をとりつつ対処していくということになっております。宮本岳志君 専門的に立ち入った話になるんですけれども、私どもが少し調べてみましたら、この1・2ジクロロエタンというものの物理化学的特性は水に難溶である、溶けにくいというふうに、これは化学的な本でも書いてあるというふうに思うので、ぜひこれの検討も改めてしていただいて、対処法に万全を期していただきたいというふうに思っております。
<有害液体物質は固化して処理を>
宮本岳志君 時間がございませんので、第七位のアクリロニトリルについてどのような処理方法になっているか。政府参考人(長光正純君) お答え申し上げます。
アクリロニトリルにつきましても、同じく流出した場合に、まずは危険区域を設定していくということでございまして、それと同時に自然拡散させることを基本といたしまして、状況に応じてはいわゆる油ゲル化剤を使った回収ということを行う場合もございます。宮本岳志君 これも有機有毒物質ということですけれども、年間五十一万九千トン船舶輸送されております。
そこでお伺いしたいんですが、このマニュアルで作業する現場の職員にはアクリロニトリルの有害性や危険性についての認識が徹底されているかどうか、また、これを積む船にはその旨が目立つように表示されているかどうか、これをひとつ御答弁いただきたいと思います。政府参考人(長光正純君) お答え申し上げます。
私ども職員の日ごろの教育といいますか、この有害性の認識等の徹底でございますが、これにつきましては、アクリロニトリルのみならず、日ごろから有害危険物質に関しまして基礎知識の向上を図るように努めるとともに、計画的に防護資機材あるいは検知器等の取り扱い、慣熟訓練等を実施するよう通達し、これを現に行っているところでございます。
アクリロニトリルの防除作業に当たりましても、現場では先ほども申し上げました有害液体物質データシート、こういったものを参考にし、引火性でありますとか爆発性あるいは有毒性、こういったものがございますので、これを考慮しつつ保護具を着用する等適切に対応するという体制をとっております。
なお、輸送する船舶等の表示はどうかというお尋ねでございますが、これは、アクリロニトリルを運ぶ船舶につきましては、危険物船舶運送及び貯蔵規則、この規則上の引火性液体類になっておりまして、これを積載する船舶には、この規則によりまして、昼間は赤い旗、それから夜間は赤い灯、これをマストその他の見やすい場所に掲げなければならないということになっております。
また、船舶交通の特にふくそういたします海域に適用されております海上交通安全法上では、いわゆる旗の信号でございますが、旗旒信号の掲揚でありますとか紅色の閃光灯の点灯、こういったものを義務づけておるところでございます。宮本岳志君 極めて有害で危険な物質だと思うんですね。発がん性についても、例えば日本産業衛生学会の発がん性評価では人に対して発がん性があると考えられる物質、こうなっております。まとまった量が流出した場合に、大気中にまき散らすわけにいかないと思うんです。油ゲル化剤で処理をするということがどうしても必要だと私は思います。
ゲル化剤というのは、処理に当たるすべての船に積み込まれておりますか。政府参考人(長光正純君) 私どもの現在こういった事故に際して対応に当たります巡視船艇には搭載しておりません。宮本岳志君 これをやはり常備するということが大切だと思うんですけれども、海上保安庁が備えつけている、現状での油処理剤というのを持っておられると思うんですが、これと同じ量の油ゲル化剤を備えつけるとした場合、その金額はいかほどになるかお答えください。政府参考人(長光正純君) お尋ねの油処理剤の量、これは現在私ども海上保安庁で約二百キロリットル備え置きをしておりますけれども、これと同量ということになると、これはゲル化剤の単価に掛け算をして出てくるのでございますが、その金額は約三億三千万円ということになろうかと思います。宮本岳志君 そもそもこういう危険な物質を船に積んでいいのかという問題もあるんでしょうけれども、行政としてそれを容認するというのであれば、万一のときの防災の体制は万全でなければならない、これはもう当然のことだと思います。油ゲル化剤を常備する経費等、最大限見積もっても三億三千万ということですので、ぜひ予算という点でもきちっと確保して、国民の安全と海洋の環境を本当に守るという観点で見直すべき点は見直していっていただきたいというふうに思います。
<七隻中の五隻まで耐用年数切れ>
宮本岳志君 次に、黒物と呼ばれる原油、重油などの大型タンカーの流出油事故対策についてお伺いしたいと思います。
ナホトカ号事故の前と後で海上防災関係予算の総額はどのようになっているか、海上保安庁お願いいたします。政府参考人(長光正純君) 海上保安庁の防災関係の予算でございますけれども、ナホトカ号事故等の教訓、これを踏まえまして、大規模流出油事故に対応するための必要な防除資機材、これを整備すべく予算要求を行ってまいっております。
ちなみに平成八年度、これはナホトカ号以前でございますが、この段階での防災関係予算が約七千七百万円でございました。ナホトカ号事故後、平成九年度の予算になりますけれども、これが約六億九千百万円ということで大幅な増額をしていただいたところであります。宮本岳志君 十分な額と言えるかどうかというのはあれでしょうけれども、ふえたことは大変評価をしたいと思っております。
十六管区ごとの排出油防除計画に基づく原油防除能力の資料というのをいただきました。この間の国会での議論を踏まえて目標の水準をクリアするところがふえてきております。しかし、四つの管区ではまだ未達成であり、引き続き努力が必要だというふうに思うんです。
この資料にある原油防除能力には、港湾局の清掃兼油回収船の能力は含まれているのか、そしてそれは何隻かお答えください。政府参考人(長光正純君) 原油防除能力の対象でございますけれども、港湾建設局の方で所管されております清掃兼油回収船、これを含んでおります。七隻でございます。宮本岳志君 その清掃兼油回収船七隻のうち、既に耐用年数を経過しているのは何隻ありますか。政府参考人(川嶋康宏君) 港湾建設局で所有をしております清掃兼油回収船の七隻のうち、関門航路に配備をしております「こうのしま」につきましては、本年三月に代替建造が完了いたしましたので、現状で船齢二十年を超えております船は五隻でございます。
これらの船につきましては、適切に維持補修をしながら作業に当たらせておりますけれども、その中で特に老朽化の激しい京浜港におります第二蒼海につきましては、平成十一年度の補正予算により代替建造をお認めいただいておりますので、平成十三年三月に完成させるように今努力をしているところでございます。宮本岳志君 今お答えにあったように、七隻中五隻が耐用年数を超えていると。防除能力が向上しているといっても実態はこういうことなんですね。本当に真剣に流出に対処しようとしているのかということが本当に問われる、姿勢が疑われかねない事態だと思います。
清掃が本務だといっても、現に一九九七年七月のダイヤモンドグレース号の事故では大きな役割をこの船が果たしたわけであります。乗組員もそういう使命感を持って働いておられるというふうに思うんです。この人たちの熱意を生かすためにも、いつまでも古くなった船でお茶を濁すということではなくて、人員もふさわしい配置をし、そして船もぜひとも新しくしていく。そうでなければ、原油防除能力も本当に絵にかいたもちになってしまうというふうにも思います。
以上、政府の海洋環境保全の体制に多くの不備があることを指摘したいと思うんですが、こうした点の改善、関係予算の大幅な拡充を求めて私の質問を終わります。