宮本たけし 宮本たけし 政治の中身を変える
   


「普天間」問題が新政権の「過渡的性格」の行方を占う試金石に

 毎回の原稿を鳩山首相本人が執筆しているため、予算委員会の論戦の関係で配信が遅れていた「鳩山内閣メールマガジン第5号」が本日届きました。今回のメールマガジンで首相は、初めて「答弁をする」立場になったことに「多少不安」があったことにも触れながら、衆議院予算委員会の論戦で「とりわけ多かった質問は沖縄の普天間基地移設問題です」と振り返っています。

 たしかにいま「普天間基地」をめぐる問題は、日本政治のもっとも熱い焦点の一つとなるとともに、わが党が先の第9回中央委員会総会(9中総)で、「過渡的性格を持った政権」と位置づけた鳩山政権の、「過渡的性格」が、いったいどこへの「過渡」なのかが問われる、いわば「試金石」ともいうべき問題にもなっています。だからこそ、わが党も衆議院予算委員会での論戦の大半を、この「普天間基地」撤去の問題にあてて、笠井亮議員が正面から論戦に挑みました。

 普天間基地の「移設」問題は、新政権が選挙中の公約から大きく後退し始めている典型的な問題の一つです。民主党は、総選挙中のテレビでの党首討論で鳩山首相自身が「県外、国外移設が望ましい」と明言したにもかかわらず、米国政府からの強い圧力にさらされるや、岡田克也外相が「嘉手納基地への統合」案を口にしたり、北澤俊美防衛相にいたっては、旧政権が結んだ米軍再編の日米合意どおりに辺野古への新基地建設を行ったとしても、「基地機能の一部をグアム(国外)や岩国(県外)に移すから、公約違反ではない」などという詭弁を弄し始めています。

 4日の衆議院予算委員会で岡田外相は、「『県外』(移設は)公約ではない」などと答弁しました。「公約」というのは、マニフェストの「文面」だけを言うのであり、党首のテレビ討論での発言は公約ではないと言うのです。外相は答弁で、マニフェストには「日米地位協定の改定を提起し、米軍再編や在日米軍基地のあり方についても見直しの方向で臨む」とだけ書いてある。1年前の民主党の「沖縄ビジョン」では、たしかに「県外・国外」という表現があったが、「あえて、この表現をとったということは、そこに一定の意味も込められている。そういう表現になっているということをご理解いただきたい」とまで述べました。

 これは、つまりこの表現の違いから「もう国外・県外は諦めた」ということを言外に理解してくれというのです。これは絶対になりたたない弁明です。党首が、公開のテレビ党首討論で「県外、国外」と言明したことが公約でないなら、選挙中の論戦には何の意味もなくなってしまいます。しかも民主党自身、野党時代には「選挙中の発言は公約ではない」などという立場には、けっして立ってはいませんでした。

 2007年の参議院選挙で当時の自民党安倍晋三首相が「消えた年金」の問題で、「最後のお一人に至るまですべて記録をチェックする」と約束しながら、実現不可能となったとき、自民党の町村信孝官房長官(当時)は「選挙中ですから、簡略化して物をいってしまっているところが確かにあった」などと言い訳しました。これに対し、当時民主党幹事長だった鳩山氏は「許せることではない、国民をバカにしている。徹底的に追及する」(07年12月)と表明。簗瀬進参院国対委員長(当時)は「民主主義の本質を理解していない。選挙の時の言葉だからこそ重い。暴論である」(同前)とまで述べ、党をあげて批判していたのです。

 鳩山首相はメールマガジンで「結論を急ぐあまり、十分な検討をしたと言い切れないということだけは、何としてでも避けなければならない」と述べ、「前政権の野党時代から我々が主張してきた沖縄の基地問題に対する考えは、本来まさに政権交代がなされた今こそ実現しなくてはならないのです」とも述べています。それならば首相は、「選挙中の発言は公約ではない」などという詭弁を許さず、選挙中の「県外、国外移設が望ましい」という自らの言明どおり、「県内たらい回しは許さない」という沖縄県民の意思を踏まえた真剣な対米交渉を行うべきです。

 一方、昨日の参議院予算委員会での自民党川口順子元外相の質問は、この党の旧態依然とした骨がらみの対米従属ぶりを浮き彫りにするものでした。冒頭から鳩山新政権の米国に対する「ものの言い方に不安を感じる」と切り出し、米国に対しては「静かに、水面下で見えないような形で言うことが大事だ」などと卑屈な主張を繰り返しました。また「普天間」をめぐっても辺野古沖への新基地建設が「唯一の道」だと主張。11月12日に来日するオバマ大統領に「12月までに検証を終えると約束」せよと、首相に迫りました。さすが国民に隠れ「水面下で見えないような形」で「核持込み」を密約してきた旧政権で、外務大臣を務めただけのことはありますね。

 鳩山首相はメールマガジンで「前政権のように、対米追従の日米関係に疑う余地もなければ、新たな検討も必要ないのかもしれません。しかし、我々はこの問題で日本の意思を明確に示したいと思っているのです。これまで基地問題で犠牲になってきた沖縄県民の思い、また、日本の外交・安全保障の基軸である日米関係、これまでの日米合意についてもよく考慮した上で、移設先には沖縄県内・県外、日本国内・国外とありとあらゆる選択肢を真剣に検討し、結論を導き出したいと思っています。」と述べています。「あらゆる選択肢」の中に「県内」が入ってきているのは公約違反ですが、日米関係について、少なくとも前政権の対米従属とは違った「新たな検討」を行い、「日本の意思を明確に示したい」とも考えているようです。

 しかし、「沖縄県民の思い」というなら答えは明瞭です。質問で笠井議員が紹介したように、この間、琉球新報と毎日新聞が合同で沖縄県民を対象に実施した世論調査でも、県外か国外への移設をめざしてアメリカと交渉すべきだというのが69・7%。これにたいして県内移設というのはあわせて24・7%。嘉手納基地統合案にいたっては71・8%が反対で賛成はわずか14・8。そして辺野古沿岸建設案については、反対67%。賛成が19・6%という結果が出ています。

 首相はメールマガジンを「日本の意思を明確に示すことで、本当の意味での強固な日米関係ができるものと思っております。私はその先頭に立ち、オバマ大統領とも真の信頼関係が築けるよう、努力してまいります。」と結んでいます。「日本の意思を明確に示す」というのであれば、今こそ鳩山政権は、総選挙での公約、沖縄県民の意思を踏まえた対米交渉に踏み出すべきです。それができなければ、旧来の対米従属外交と変わらないといわれてもしかたがありません。

 わが党は9中総で、「過渡的性格」を持つ鳩山新政権の「行方がどうなるかは現時点では不透明」といいましたが、「日米軍事同盟絶対」という、古い自民党政治の行き詰った枠組みにどういう態度をとるか、いよいよ新政権の「過渡的性格」の行方が問われる最初の正念場を迎えています。民主党政権が右往左往しつつある時、足引っ張り野党の自公は、対米従属への復帰を執拗に迫り、政権に入った社民党は「政権への配慮」から、8日に沖縄県で開かれる米軍普天間飛行場の県内移設に反対する県民大会への福島大臣の出席を取りやめると発表しました。まさに今、国会では、「建設的野党」日本共産党の役割が光輝いています。


 
 

Last Update : 2009年11月07日