「官から民へ」…「民間にすれば万事うまくいく」というような議論は正しいか?
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「官から民へ」…「民間にすれば万事うまくいく」というような議論は正しいか?

 小泉純一郎元首相が繰り返し叫んだ「官から民へ」「民間にできることは民間に」などというスローガンは、その後も安倍内閣にも引き継がれ、「構造改革」路線の中心命題の一つとなってきました。安部内閣の後を引き継いだ福田内閣は「貧困と格差」への批判のひろがりと参議院選挙での惨敗を受けて、若干の手直しを余儀なくされたものの、「構造改革」路線を改めようとはしていません。

 一方民主党も、この問題では自民・公明と大差なく、先日の大阪市長選挙では「大阪市を腐らせたのは助役出身の市長がずっと居座ってきたから」とか「初の民間出身市長の誕生を」などと叫んで選挙をたたかいました。当選後民放アナウンサー出身の新市長が「私は関市長を批判したが、自民党、公明党を批判したことはない」などと言っているのも、その背景にはこういった事情があります。

 世間でも役所や公務員の不祥事が起こるたびに「民間では考えられない」とか「民間会社だったら、とっくに倒産している」とかいう言葉をよく耳にします。なるほど今日の日本では非効率で不合理な規制を、役所が利権の隠れ蓑にしているような事例がままあり、それらはただちに正されなければなりません。しかし、それは本当に「民間にまかせれば万事が上手くいく」というような単純なものなのでしょうか。

 こういう問題を考える上で面白いニュースが流れました。それは、精密機器メーカー大手「キヤノン」が大分市に建設した工場をめぐり、ゼネコン大手「鹿島」が、受注の謝礼金を経費に装って、約5億円の「裏金」をつくり、その大半を御手洗キャノン会長の知人が経営する大分市のコンサルタント会社に支払っていたという事件。

 この「裏金」が所得にあたるとして、鹿島は東京国税局から約5億円の所得隠しを指摘されました。しかし国税局の指摘を受けても、鹿島は最終的な支払先を明かさず、重い税金を課される「使途秘匿金」と認定されたといいます。鹿島は、06年3月期までの2年間で、この約5億円を含めて約6億円を所得隠しと指摘されました。経理ミスも含めた申告漏れ総額は30数億円に上り、追徴課税された模様です。

 この構図、いま大問題になっている防衛省汚職や、かつての金丸ゼネコン汚職ともウリ二つの事件ですが、違いはといえば利益供与を受けたのが公務員や政治家、つまり「官」ではなく「民間人」だということ。しかしキャノンの御手洗氏といえば財界の総本山「日本経団連」の会長であることは周知の事実です。「官」ならば守屋氏は逮捕され、金丸氏や田中角栄元首相でさえ逮捕されました。しかし、民間人なら日本経団連会長といえども罪には問われず、逆に鹿島は相手を守るために重加算税さえ支払うというのです。

 「官から民へ」という議論の根本にあるのは「『官』のやることは胡散臭いが民間会社のやることは清潔である」などという、一方的な決めつけです。しかし、私が追及した「武富士」や「リコール隠し」の三菱自動車、食品業界では雪印、不二家、船場吉兆、はては伊勢の名物「赤福」まで、「民間会社の経営はモラルが高い」などというのは何の根拠もないばかりか、むしろ儲けのためにはモラルなどというものはぎりぎりまで投げ捨てるというのが実態です。

 「中には不見識な会社もある」などと言い逃れてきましたが、御手洗日本経団連会長のこのモラルを見れば不祥事を起こしたこれらの企業が決して例外ではないことが、事実で証明されています。このように冷静に事実を見るならば、郵政民営化など「官から民へ」という一連の政策は「悪いことをできなくする」のではなく、逆に「悪いことをしても逮捕されなくしてやる」ということにほかなりません。こんなものが「改革」などではないことは、もはや明りょうではないでしょうか。

 
 
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