「ホワイトカラー・エグゼンプション」今国会は見送りへ…労働時間短縮のための真に必要な政策は?
政府・与党は6日の協議会で、残業代も払わずサラリーマンを何時間でも働かせる「ホワイトカラー・エグゼンプション(WE)」について、今国会への提出を見送り、残業代の割増率引き上げを先行して実施する方針を決めました。
「過労死促進法案」「残業代ゼロ法案」であるWE導入に反対する世論と運動によって、ついに今国会については提出断念に追い込まれたものですが、政府・与党は参議院選挙後にも導入を狙っており、決して諦めたわけではありません。この悪法の参院選後の国会提出を許さないためにも、参議院選挙がいっそう大切なたたかいになってきました。
同時に、「先行実施」を決めたと報じられている「残業代割増率引き上げ」も決してサラリーマンにとって歓迎できるようなしろものではありません。だいたい「先行実施」という言葉自体が危険です。これをのんでしまえば、「ワンセット」だとして後からWEをのまざるを得なくなるという危険すらはらんでいます。
しかも、今回の「割増率引き上げ」はきわめて重大な問題点を含んでいます。現行の残業時間の上限目安は月45時間ですが、ここまでの残業については何の引き上げもなく、現行どおり…。「過労死ライン」と言われる月80時間を超えて初めて、割増率を50%に引き上げる方針だというのです。
「月80時間」といえば、私が辻田さんたちとたたかってきた過労死の公務災害や労災の認定を求める裁判で、「残業月80時間超」が証明されれば、基本的には公務災害・労災が認定されるという、いわば「因果性」が裁判所によって認められている水準なのです。つまり「月80時間以上残業させる」ということは「死ぬかもしれないことをやらせる」ということであって、ただちに禁止すべきものです。
それを「50%の割増率」に引き上げるということは、逆に「50%割増の残業代を払えば、労働者を死ぬまで働かせてもかまわない」という制度をつくることにほかなりません。また現在きわめて低い賃金水準にある労働者に対して、5割増の残業代をぶら下げて「月80時間以上の残業」を煽る…つまり過労死を煽りたてる政策とさえいえるものです。
「過労死」を根絶し、異常な残業を減らし、労働時間問題の根本的解決をすすめるためには、私は次のような政策が求められていると考えます。
(1)最低賃金を時間1000円以上に引き上げて、まず労働者の基本給を引き上げること。「残業代がなければ生活が成り立たない」といった現状をなくすことが、何よりもまず必要です。
(2)次に「月80時間以上」という裁判所でさえ「過労死水準」を認定しているような残業はそれをさせた経営者に対して刑事罰つきで禁じること。ちなみに、残業代を支払わない、いわゆる「サービス残業」は、すでに刑事罰つきで禁じられています。
(3)45時間以内の残業代こそ、50%割増に引き上げること。こうすれば、現状で行われているすべての残業代が引き上げられることになり、サラリーマンの収入が増えるとともに、これは日常的な残業を減らすインセンティブになります。
(4)そして45時間から80時間の間の残業代については、「その残業をさせるより、新たに正社員を雇い入れるほうがコストが安くなる」という水準の割増率にまで引き上げること。これによって「ワークシェアリング」をすすめ、雇用をひろげることができます。
(5)最後に、中小企業に対してはその経営を守るために、このルールを守るためのコストを負担できるような制度が必要です。そのために、@大企業による不当な下請けいじめのコストダウンをやめさせるルールをつくること。Aそれでも生まれる負担を補助する助成制度をつくること、などが必要ではないでしょうか。
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