「思慮に欠く軽口と開き直り」−−「案の定」の麻生外相
麻生太郎外務大臣が21日、米通信社ブルームバーグ・テレビのインタビューで「遊就館には何度か行ったことがあるが、戦争を美化するという感じではなく、その当時をありのままに伝えているというだけの話だ。美化しているという感じではなく、その当時はそうだったという事実を述べているにすぎないと思う」と述べたことが重大な外交問題に発展しつつあります。
中国外務省の劉建超報道官はただちに記者会見で麻生外相発言について「こうした言論を発表したことに驚いている」と強い不快感をしめしつつ、「遊就館」が侵略戦争の歴史を否定し、日本軍国主義の侵略を美化する「靖国史観」の中核的施設であると指摘、「重要な歴史さえ否定するのであれば、彼はあの時期の歴史に正しく対応する勇気がないことを物語るだけだ」と厳しく批判しました。
驚いたのは何も中国外務省や劉報道官だけではありません。私も驚きました。小泉首相は先日のAPEC終了後の記者会見で、英BBC放送記者から過去の戦争を「防衛」の名で正当化する見解を支持するのかと問われ「支持していない」と答えたばかりだからです。それを直後に外相がくつがえしたのでは、ますます日本外交は信用されなくなります。
私の手元に靖国神社発行の「遊就館図録」というものがあります。ページをめくると冒頭に靖国神社宮司の「ご挨拶」が載っており「近代国家成立の為、我国の自存自衛の為、さらに世界史的に視れば、皮膚の色とは関係のない自由で平等な世界を達成するため、避け得なかった戦ひがございました。」と書かれてあります。
また靖国神社社務所発行「やすくに大百科」という子ども向けパンフレットもあります。パンフレットの中の「やすくに何でもQ&A]という解説では、「戦後、日本と戦った連合軍(アメリカ、イギリス、オランダ、中国など)の形ばかりの裁判によって一方的に『戦争犯罪人』という、ぬれぎぬを着せられ、むざんにも生命をたたれた1068人の方々…靖国神社ではこれらの方々を『昭和殉難者』とお呼びしていますが、すべて神様としてお祀りされています。」と子どもに説明するのです。
これが「事実を述べているにすぎない」などと語る外務大臣に外交はできません。そんなことはとても世界に通用しないことがわかっているから、小泉首相でさえ「靖国神社の考えと、政府の考えは違う」と述べざるを得ないのです。もう一つ言いましょう。「靖国史観」が世界に通用しないことは、実は靖国神社自身も多少は気づいているのです。
私の手元にもう一つある「遊就館」のパンフレットの英語版、「WELCOME TO THE YUSHUKAN」では日本で最も歴史の古い軍事博物館であることや、展示場の案内、「ゼロ戦」をはじめ10万アイテムが揃っているという説明以外、「靖国史観」的なことは、全然書かれていません。まあ先日引用した金沢大学経済学部の碇山教授の論を借りれば「ナンチャッテ新自由主義」は同時に「ナンチャッテ靖国史観」ですからね… 麻生太郎氏は私が参議院の委員会で論戦した中で、最後の総務大臣でした。「思慮に欠く軽口と開き直り」が特徴の大臣でした。昨年4月、イラクにおける三人の人質事件が大問題になっていた時、人質の中に北海道の人がいたことから、北海道の高橋はるみ知事が北海道東京事務所を人質の家族の待機場所に使わせたことにかみつき「何だか知らないけど、イラクの話を北海道東京事務所でやっている、不思議に思わないか」と放言しました。
私は昨年4月15日参議院総務委員会で「地方公務員法及び任期付き職員法改正案」の質疑の冒頭、これを当時の麻生総務大臣に質しましたが、彼の答弁は「事務所が隣で、車が通れず、えらく迷惑してる。抗議が来ているのはお互い様だ」というような「開き直り」でした。(詳しくは「国会論戦データ」http://www.miyamoto-net.net/sanin/040415.html#topをご覧下さい)
第三次小泉内閣の閣僚名簿に「外務大臣・麻生太郎」と見た時には、あの時のやりとりが思い出され、「これは日本外交…大変だぞ」と思っていましたが、まさに「案の定」というところです。
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